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最終更新日:2025/05/19
Google Cloud は、2025年4月9日にオープンプロトコル「Agent2Agent(A2A)」を発表しました。A2A を使うことで、異なるベンダーやフレームワークのAIエージェントを安全かつ円滑に連携し、マルチエージェントシステムを構築できます。高性能なAIエージェントの効果を最大化し、生産性の向上やコスト削減にも貢献すると期待されます。
本記事では、Agent2Agentの特徴や仕組み、MCPとの違い、構築方法などについてわかりやすく解説します。AIエージェントの効果的な活用について検討するために、ぜひお役立てください。
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Agent2Agent(A2A)は、2025年4月10日(日本時間)に開催されたイベント「Google Cloud Next 2025」にて、Google Cloudより公表された共通プロトコルです。A2A を用いることで、特定のタスクに特化したAIエージェント同士を安全かつスムーズに連携し、各モデルの性能を組み合わせることが可能です。
また、異なるベンダーや技術基盤で構築されたエージェント同士も、コミュニケーションやデータ交換を効率的に行えるため、さまざまなプラットフォームやアプリケーションを横断的に活用、稼働できるマルチエージェントシステムの構築にも寄与します。
Googleの他、SalesforceやSAPなど50以上の企業が開発に参加しており、AIエージェントの活用を目指す上で有効な標準ルールとして注目を集めています。
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オープンプロトコルとは、仕様が公開されている通信規格のことです。メーカーや開発企業によらず、共通で利用されるルールや仕様を指します。ライセンスによる制限や制約を受けることなく利用できるため、幅広いデバイスやアプリケーションがシームレスに接続できる環境を確立することが可能です。
また、オープンプロトコルにより、新しい技術の開発や生産性の向上といった効果が期待できます。AIエージェントのオープンプロトコルは、外部ツールやシステムとAIエージェントとを連携する際に用いられ、各APIをまとめて対応できます。
A2A は、AIエージェントがさらに高機能化し、幅広く活用されていく流れの中で特に重要になるツールの1つと考えられます。近年は、AI技術の浸透とともに、多くの企業が異なるフレームワークでAIエージェントを構築しています。
ただ、特定のタスクに特化したAIエージェントを単一で活用するシーンは限られており、複数のエージェントを組み合わせて問題解決を進めたい場合には不便です。そこで、共通ルールである A2A のようなプロトコルを活用することで、複数のAIエージェントを横断的に協働させることが可能になります。
従来は個別に機能していたAIエージェント同士が、安全性の確立された環境でスムーズに連携できるようになれば、より多くの場面で効果的な活用が期待できます。
Agent2Agent(A2A)の特徴として、土台となる「5つの設計原則」や、含まれる機能について解説します。
A2Aは、使いやすさや安全性、柔軟性の土台として、以下5つの「設計原則」を掲げています。
A2A は上記をベースとし、特定のベンダーやフレームワークに縛られずに、多様なAIエージェントが協働するための共通ルールとして整備されています。
A2A で、AIエージェント同士が自律的に連携する際に「エージェントカード」と呼ばれる要素が活躍します。エージェントカードは、AIエージェントが自分の性能(できること)やエンドポイントをまとめたものです。
A2A では、JSON 形式でエージェントカードを公開し、顧客がタスク実行に適したAIエージェントを特定、使用するために必要な情報を提供します。他のAIエージェントが自動的にエージェントカードへアクセスし、内容を読み取ることが可能です。
AIエージェント同士がお互いの得意分野を把握し、最適な連携先を自律的に選べる環境が構築されています。
A2A では、インターフェース内で以下のコアオブジェクトがやり取りされます。
これらの要素を用いて、複数エージェントの連携が進められます。
能力発見(Capability Discovery)とは、他のAIエージェントの能力(できること)を調査し、見つけ出す仕組みです。前述したエージェントカードを読み取り、対応タスクやスキルデータに基づいて適切なAIエージェントを自動的に選定するために用いられます。
インターフェース内のAIエージェント構成の変化にも、柔軟に対応が可能です。AIエージェントはタスクを実行するために効率的に協調し、複数の処理を並行して進められるワークフローを実現します。
A2A で、AIエージェント同士が連携し、タスクの依頼・応答を自動化する際のおおまかな流れは以下の通りです。
タスクの内容に応じて、AIエージェント同士がやり取りしながら細分化されたタスクを遂行することが可能です。A2A ではユーザーの要件を満たし、タスクを完了させることを重視しており、短時間で完了する作業から数日かかるリサーチまで、幅広いタスクに対応可能です。
A2A は、MCP(Model Context Protocol)とよく比較されることがあります。MCPは、LLM(大規模言語モデル)とデータ、外部ツールなどを接続するためのプロトコルです。
A2A がAIエージェント間の通信や協力を目的とするのに対し、MCP はAPI接続や外部システムとの連携・活用に用いられます。また、A2A の情報形式が会話や進捗などの情報ですが、MCPでは関数呼び出しが中心です。
なお、A2A は Anthropic が提唱するMCPを補完しており、役割分担する形で提供されています。実際のAIアプリケーションでは、A2A と MCP 両者の併用が前提となる可能性が高いでしょう。
Google Cloud では、A2A/MCP 準拠のAIエージェントを効率的に開発し、デプロイするための環境が整備されています。ADKを用いた開発からデプロイまでの主な手順は以下の通りです。
企業が A2A を導入することで得られる代表的な利点は、以下の3つです。
A2A を使えばAIエージェント同士が自律的に情報をやり取りし、タスク処理を一括管理できます。よって、人的なオペレーションが削減され、全体的な生産性向上に貢献します。また、AIエージェントの得意分野を持ち寄ることで、それぞれの強みを活かした多角的な視点や出力が実現するため、新しい企画やアイデア創出にもつながります。
加えて、A2Aはベンダーやプラットフォームに依存しないオープンプロトコルであり、より柔軟な最適化によって、コストを抑えながら全体の機能性を高められる可能性もあります。
A2AはAIエージェントの連携により、業務効率の向上や業務自動化、顧客体験の強化など、さまざまなシーンでの活用が期待できます。ここでは、A2A導入を通して実現できる代表的な活用パターンを紹介します。
A2A を用いることで、マルチエージェントシステムとして複雑なプロセスを効率的に実行する環境を構築できます。例えば、プロジェクトマネージャー役のAIエージェントが、データ分析やレポート作成、外部API連携など各種エージェントにそれぞれのタスクを役割分担し、最終的な報告書を自動作成するといった使い方が可能です。
顧客サポートなどの対話サービスにおけるマルチモーダル対応も可能です。具体的には、チャット型ヘルプデスクエージェントがユーザーの質問を受け取る間に、裏側ではFAQ検索やITシステム操作用のAIエージェントと連携し、最適な回答や操作を提示します。
ユーザーには1つのカスタマーサポート窓口だけが見えていても、複数のAIエージェントが水面下で協働することで、より高度で高品質なサポートが可能です。
A2Aは、今後単なる通信規格を超えて、企業や業界を横断するAIエージェント連携の共通言語となることが期待されています。前述したMCPとの組み合わせは、幅広い企業における開発や研究を支えていく可能性があります。
また、AIエージェント同士が知識や過去の学習データを共有し、最適な協働パートナーを選定する自己組織化的な連携が可能になれば、より高度な柔軟性を持つ分散AIネットワークの実現につながるでしょう。
A2A は、単独で稼働していた個別のAIエージェントが、互いに連携し、つながるAIエージェントとして協働する仕組みです。A2A とMCPと組み合わせることで、自律的にツールやシステムを使いこなし、他エージェントと役割分担しながら複雑な業務を完了できるようになります。
GoogleがオープンプロトコルとしてA2Aを公開しており、誰でも活用・貢献することが可能です。将来的には、AIエージェント活用の新しい形として、A2A が重要な役割を担う可能性があります。
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A2Aはオープンプロトコルであり、Google Cloud以外の環境でも利用できます。例えば、クラウド上のAI機能やオンプレミス環境、他社のAIエージェントなどとも連携可能です。また、HTTPやJSONといった標準技術に基づいており、既存システムとも統合しやすい点が特徴です。
はい、利用できます。Google Cloud は、A2A対応エージェントの使用に向けて、ノーコード/ローコードで操作可能なインターフェースも提供しています。代表例として、Google Agentspace があり、プログラミングの専門知識がなくても既存のA2A対応エージェントを選定、連携させることが可能です。現場の担当者が、簡単に実務に活用できるでしょう。
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