AIの行動分析技術の仕組みは?カメラで人の行動を監視し防犯対策を強化
最終更新日:2024/04/04
AI技術の発展に伴い、さまざまな業界でAIが導入され始めています。マーケティング分野でのAI活用が最も多くの人に認識されているかもしれませんが、最近は「防犯(セキュリティ)」の分野でもAIが導入され始めているのです。
すでに中国では、顔認証システムが備わっている「スマートグラス」というサングラスが実用化されており、人混みの中で容疑者を発見するなどの成果をあげています。そのような中で、最近特に注目されているのが、映像から人の行動を認識する「行動分析技術」です。この技術も、まさにAIによって実現されているものなのですが、具体的にどのような仕組みで成り立っているのでしょうか。今回は、AIを活用した「行動分析技術」について、詳しくご紹介していきます。
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映像から人の行動を認識するAI技術とは?
2019年11月、富士通研究所と富士通研究開発中心有限公司が「行動分析技術 Actlyzer(アクトライザー)」というAI技術を発表し、大きな注目を集めました。この「Actlyzer」とは、映像から人のさまざまな行動を認識する技術のことです。
これまで、AIを活用して人の行動を認識できるようにするには、現場導入までに最低でも数ヶ月の時間が必要でした。しかし「Actlyzer」の場合は、人の基本的な動作を学習・認識することが可能なため、学習した動作を組み合わせることによって「不審行動」「購買行動」などの人の行動を認識できるようになったのです。
このようにさまざまな人の行動の認識が可能になったのは、ディープラーニングによって行動を認識する技術が用いられているからに他なりません。「Actlyzer」では、人間の複雑な行動を構成する要素となっている100種類ほどの基本動作を独自に定義化しています。そして、その定義化された基本動作をディープラーニングによって認識しているわけです。そのため、あらかじめ大量のデータを用意し、認識させたい基本動作を学習させておけば、100種類ほどの基本動作を90%以上の確率で認識させることが可能だといいます。
「基本動作」がどのようなものなのか、イメージが湧かない方もいらっしゃるかもしれませんが、これは「走る」「歩く」などといった動作が該当します。もちろん基本動作はそれだけではなく、「首を横に振る」「首を縦に振る」といった動作に加え、より細かな「首を右に回す」「首を下に傾ける」といった細かな動作まで認識することが可能です。
(参照:映像から人の様々な行動を認識するAI技術「行動分析技術 Actlyzer」を開発 : 富士通)
AIによる行動分析で不審行動をいち早く認識
「Actlyzer」では、100種類ほど存在する基本動作の組み合わせ、順番、発生場所、行動対象など、より細かな指定をすることも可能です。そのため、不審な行動と捉えられる条件を指定し、その不審行動のみを認識させるような使い方をすることもできます。
簡単な設定で人のさまざまな行動を認識することができますし、パラメーターの変更などによって認識精度を調整することも可能なため、今後「セキュリティ」を目的とした導入が進んでいくことが期待されているのです。
その一例として、防犯カメラへの活用が挙げられるでしょう。空き巣による被害を防ぐためには、ドアの前に現れた人物が不審な動作をしているかどうかの判別が重要になります。ただ防犯カメラを設置するだけでは、被害が起きた後に映像を確認することしかできません。そのため、映像を確認した頃には犯人が遠くまで逃走してしまっている可能性もあるでしょう。
その点、「Actlyzer」であれば、「扉の前にいる」「鍵穴を見ている」「鍵穴に手を当てている」といった基本動作の組み合わせや、その発生場所、行動の対象などを細かく設定しておくことで、不審行動をいち早く察知できるようになります。また、「首を左右に回してキョロキョロしている」などの条件を追加したり、各行動の継続時間を指定したりすることも可能なため、認識の精度を調整していくこともできるのです。
実際に、屋内外で撮影された21種類の映像データを用いて行われた実証実験では、「家の様子を伺う」「凶器を振り回す」などの計8種類の不審行動をすべて認識することに成功したといいます。また、この8種類の不審行動を検出するために必要となる「基本動作の組み合わせ作業」は、わずか1日で終えることができているため、実用化のハードルも決して高くないといえるでしょう。
購買行動分析や作業時間測定といった形での活用にも期待が集まる
このように、「Actlyzer」の技術はセキュリティ強化の面で大きな期待が集まっているわけですが、AIによる行動分析技術は、別の用途での活用にも期待が集まっています。たとえば、小売店で「Actlyzer」を導入した場合、万引き対策として活用するだけでなく、来店者の購買行動を分析するために活用していくことも可能です。そして、購買高度の分析によってそれぞれの商品の関心度を調査すれば、新たな戦略を立てる際に活かしていくこともできるでしょう。
また、工場の現場に「Actlyzer」を導入すれば、経験豊富な熟練者と経験が浅い初心者の技能比較を行うことなども可能になります。その比較結果をもとに「初心者がとくに注意すべきポイントは何か」を明確にし、新入社員の教育に活用していけば、生産性の向上につなげていくことも可能になるでしょう。
このように、AIを活用した行動分析技術は、セキュリティやマーケティングなど、さまざまな分野で活用していくことができます。とくにセキュリティに関しては、これまで目視で不審行動の確認を行わなければならなかったため、確認する人間によって「不審と判断すべきかどうか」の基準が大きく異なってしまう傾向にありました。そのため、どうしてもセキュリティを強化しきれないという課題が残されていたわけです。
その点、「Actlyzer」であれば、どのような基準を満たした場合に不審行動とみなすか、明確に定義化することができます。そして、その基準を満たした人間を高い精度で認識していくこともできるのです。これらの業務をAIに任せられるようになれば、人間は別の業務に力を注げるようになるため、さらなる生産性の向上も期待できるでしょう。
とくに近年は、少子高齢化に伴う人手不足問題が深刻化しているため、業務効率化が大きな鍵を握っていると言っても過言ではありません。その深刻な課題を解決する上でも、AIを活用した行動分析技術は重要な役割を果たしていくのではないでしょうか。
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