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最終更新日:2025/03/18
Function Callingは、ChatGPTの新しい機能です。プロンプトに必要な関数を呼び出し、外部APIやサービスと連携する「橋渡し役」として機能します。
これまでのような複雑なルールに基づくパターンマッチングが不要となり、AIの言語処理能力を活用することで、より簡単なシステム連携が可能になりました。
本記事では、Function Callingの基本から実装方法、ユースケースまで解説します。
Function Callingは、ChatGPTの新機能で、AIに外部の関数を呼び出す「準備をする」機能です。ユーザーのプロンプトから適切な関数を呼び出し、外部APIやサービスと連携できるようになります。
複雑なルールに基づくパターンマッチングや、パラメータ抽出のロジックを実装する代わりに、AIの自然言語処理能力を活用して外部システムとの連携を実現できます。
以下より具体的に解説します。
Function Callingとは、ChatGPTが自然言語の質問や指示に応じて、定義済みの外部関数を呼び出すための準備をする新機能です。ポイントは、ChatGPT自体が関数を「実行する」わけではなく、どの関数を呼び出すべきか、どのパラメータを渡すべきかを判断して、その「準備をする」点です。
これまでのAIチャットボットでは、プロンプトからユーザーの意図を汲み取り、適切な関数を呼び出すために条件分岐や正規表現によるパターンマッチングが必要でした。例えば「東京の明日の天気は?」という入力から「天気情報を取得」という意図と、「東京」「明日」というパラメータを抽出するには、さまざまなパターンに対応するルールをユーザー側が手動で実装する必要がありました。
Function Callingでは、AIが適切な関数を選択し、必要なパラメータを抽出します。ただし、関数の実行やエラーハンドリングなどは、ユーザー側の実装が必要です。
OpenAI APIにおけるFunction Callingは、自然言語とプログラム的な処理の橋渡し役として機能します。例として、天気情報を提供するチャットボットを挙げます。
「今日の東京は?」というユーザーの質問に対して、以下のような流れで処理が行われます。
この一連の流れにおいて、Function Callingは特に手順2〜3の部分を担当します。従来であれば、この部分はユーザーがルールを実装する必要がありましたが、Function Callingによって簡略化されました。
Function Callingの活用シーンは多岐にわたります。
主な例としては、以下の通りです。
これらに共通するのは、自然言語による指示から構造化されたデータや処理への変換が必要であるという点です。Function Callingはこの変換プロセスを効率化し、より自然なユーザーエクスペリエンスを実現します。
これまでの関数呼び出しと、Function Callingの違いは以下の通りです。
比較項目 | 一般的なプログラミング | Function Calling |
入力方式 | プログラムコードによる直接的な関数呼び出し(事前に定義された形式での呼び出し) | 自然言語からのパラメータ抽出による間接的な呼び出し(柔軟な入力形式) |
実行フロー | 直接的な関数実行(呼び出し→実行の1ステップ) | AIによる関数選択 → 引数作成 → 実行の3段階処理 |
実行環境 | プログラム実行環境内での直接実行(ローカルまたはサーバー環境) | APIを介した実行準備と外部システムでの実行(OpenAI APIとの連携が必要) |
データ形式 | プログラミング言語固有の型とフォーマットに依存 | 標準化されたAPIレスポンスフォーマット(JSON形式) |
Function Callingによって、プログラミングの知識がなくても自然言語で関数を呼び出せるようになります。ただし、APIと統合するための実装やエラーハンドリングには、ある程度のプログラミング知識が必要です。
APIレスポンスのフォーマットについても、従来のプログラミングでは言語によって異なる形式(戻り値の型など)が使用されますが、Function Callingでは統一されたJSON形式でレスポンスが返されるため、多言語環境での統合が容易になります。
Function Callingの実装は、3つのステップで進める必要があります。
基本的なコード構造では、関数定義、APIリクエスト、レスポンス処理、および結果の表示という要素が含まれます。重要なのは「関数定義」で、ここでAIに関数の名前、説明、必要なパラメータなどを理解させる情報を提供します。
Python環境でFunction Callingを実装するには、まず「openai」や「requests」などの必要なライブラリをインストールします。APIキーを環境変数として設定することがセキュリティ上望ましいです。
基本的なコード構造は、JSONスキーマ形式での関数定義、ChatGPT APIへのリクエスト送信、そしてレスポンス処理の流れになります。関数定義では名前、説明、パラメータを明確に指定し、AIが適切に関数を選択できるようにします。
エラーハンドリングでは、パラメータの不足や不正な値、外部APIからのエラーレスポンスなどを適切に処理することが重要です。try-except構文を使って各種エラーに対応し、ユーザーにわかりやすいメッセージを返すようにしましょう。
OpenAI APIでFunction Callingを利用するには、リクエスト時に特定の構文とパラメータを指定する必要があります。基本的なAPI呼び出しでは、通常のメッセージ配列に加えて「functions」プロパティと「function_call」オプションを含めます。
functionsプロパティは配列形式で定義し、各関数の名前、説明、パラメータを指定します。例えば天気情報取得関数の場合、”name”に関数名、”description”に関数の説明、”parameters”に必要なパラメータを記述します。parametersはJSONスキーマ形式で記述し、objectタイプのproperties内に各パラメータを定義します。
パラメータの型指定では、string(文字列)、integer(整数)、number(数値)、boolean(真偽値)、array(配列)、object(オブジェクト)などの基本型を使用できます。さらに制約条件として、minimum/maximum(数値の範囲)、enum(選択肢)、format(日付形式など)、pattern(正規表現)なども指定可能です。
function_callオプションでは、関数呼び出しの挙動を制御します。”auto”を指定するとAIが必要に応じて関数を呼び出し、{“name”: “関数名”}で特定の関数を強制的に呼び出します。”none”を指定すると関数呼び出しを無効化します。状況に応じて適切なオプションを選択することで、より効果的なFunction Callingが実現できます。
Function Callingの代表的なユースケースとして、まず天気情報の取得が挙げられます。「今日の東京の天気は?」と質問すると、ChatGPTが「get_weather_info」関数を選択し、「city_name: 東京」というパラメータを抽出。実装側では、このパラメータを使って天気APIにリクエストを送信し、得られた天気情報をベースに回答を生成します。
JSONレスポンスのパース例では、APIから返されるfunction_call情報を処理します。レスポンスから関数名を取得し、json.loads() で argumentsをパースして関数の引数として使用しましょう。
例えば、{“name”: “get_weather_info”, “arguments”: “{“city_name”: “東京”}”}というレスポンスから、関数名と引数を抽出し、対応する関数を呼び出します。
複数の関数を組み合わせた例としては、「東京のおすすめの観光地」を提案するケースです。まず「get_weather_info」関数で天気を確認し、次に「recommend_location」関数で天候に応じた観光地をおすすめします。晴れの日は屋外の観光地、雨の日は屋内施設を推薦するなど、複数の関数を連携させることで、より状況に適したレスポンスを生成できます。
Function Callingを効果的に活用するためには、関数の設計から実装、運用までの一連のプロセスを最適化することで、より質の高いユーザー体験を提供できます。
設計段階では、ユーザーの意図を正しく捉えられるよう、関数の名前や説明、パラメータなどを定義することが大切です。実装段階では、エラーハンドリングやパフォーマンス最適化などに注意を払い、安定した動作を確保する必要があります。
効率的なFunction Calling実装のためには、まず関数定義の最適化が大切です。関数名は目的をシンプルに表し、説明は具体的かつ明確にすべきです。
例えば、「get_weather」よりも「get_weather_forecast」のように具体的な名前を使い、説明には入力例や出力形式も含めると理解されやすくなります。また、関数は「単一責任の原則」に従い、一つの関数で一つの機能を実現するよう設計します。
パラメータ設計のベストプラクティスとしては、必須パラメータと任意パラメータを明確に区別し、適切な型・制約(例えばenumによる選択肢の限定、minimum/maximumの範囲指定)を設けることで、意図しない入力を防ぎ、エラーを減らすことができます。
Function Callingで発生しやすいエラーの一つに、引数のフォーマットエラーがあります。AIが生成したJSONが不正な形式だったり、必須パラメータが欠けている場合があります。
これに対処するには、JSONのパース前にバリデーションを行い、不正な形式の場合はデフォルト値を使用するなどのフォールバック処理を実装します。また、AIに対して明確なパラメータ定義を提供することで、エラーの発生率を下げることも可能です。
APIレスポンスのパースエラーも頻繁に発生します。これは、APIからのレスポンス形式が予期したものと異なる場合に発生します。対処法としては、try-catch構文を使用したエラーハンドリングや、レスポンスの型を確認するバリデーション処理を実装します。また、APIのドキュメントを参照し、レスポンス形式の変更に対応できるよう、柔軟な設計を心がけることも重要です。
実行時エラーとは、関数の実行中に発生するさまざまなエラーのことです。外部APIへの接続失敗、タイムアウト、認証エラーなどが含まれます。各エラーに対処するには、タイムアウト設定やリトライ処理、エラーログの記録などが効果的です。
Function Callingのパフォーマンスを高めるためには、APIリクエストを最適化します。不要なリクエストを減らすため、複数の処理を一つのリクエストにまとめたり、適切なモデルを選択したりすることが効果的です。
レスポンス処理の効率化では、非同期処理を活用して待機時間を短縮したり、ストリーミングAPIを使用してリアルタイムなレスポンスを実現したりする方法があります。また、レスポンスのパースや処理にはパフォーマンスを考慮したライブラリやアルゴリズムを選択し、メモリ使用量や処理時間を最適化します。
また、キャッシュも活用できます。よく利用する関数の結果をキャッシュすることで、同じ質問に対する応答時間を短縮することができます。キャッシュの有効期限や更新ポリシーを設定しておくことが重要です。
Function Callingは、ChatGPTが自然言語の指示に基づいて関数呼び出しの準備をする機能です。AIが適切な関数を選択し、必要なパラメータを抽出することで、これまで必要であった複雑なパターンマッチングの実装が不要になります。
活用のポイントは、関数名と説明の設定、単一責任の原則に基づく関数設計、適切なパラメータ制約の設定などがあります。また、引数フォーマットエラーやAPIレスポンスのパースエラーなどに対するエラーハンドリングも欠かせません。
カスタマーサポートの自動化や商品検索、レポート生成など、さまざまなユースケースでFunction Callingの活用が期待できます。
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