DXを推進するAIポータルメディア「AIsmiley」| AI製品・サービスの比較・検索サイト
03-6452-4750 10:00〜18:00 年末年始除く

ソブリンAIとは?意味や特徴・課題・日本や海外での取り組みも紹介

最終更新日:2026/01/27

ソブリンAIとは?

ソブリンAIは、AI開発・運用を自国や自社組織の管理下に置き、データや判断プロセスを主体的に統制する概念です。AI活用が急速に進む現代では、海外クラウドや特定企業への依存が法的管轄やデータ主権の課題として顕在化しています。

各国政府や企業は、AIを経済安全保障や基幹インフラの一部として捉え直しており、最適な導入・運用を実現するためにソブリンAIの重要性が高まっています。

本記事では、ソブリンAIの概要や必要性、国内外のプロジェクトや動向、ビジネスへの影響などについて解説します。

ソブリンAIとは?

ソブリンAI(Sovereign AI)とは、国家や組織が自らの法制度や文化的価値観に基づき、AIを独立して制御・運用する考え方です。ソブリンは、日本語で「主権」を意味する単語です。

AIモデルの開発や学習用データの管理、生成結果の活用までを自国や自組織の管理下で完結させ、外国企業や他国の法制度に左右されない体制を構築する動きを指します。

この考え方は、データ主権(Data Sovereignty)の延長上に位置づけられます。国外へのデータ流出や、他国法によるアクセスリスクを抑えることが主な目的です。近年は、国家安全保障やプライバシー保護への関心が高まっており、ソブリンAIの導入・運用について欧州や中国を中心に議論が進んでいます。

ソブリンAIの階層構造

ソブリンAIは、「データ主権(Data)」「インフラ主権(Compute)」「ソフトウェア主権(Model)」という主に3つの層で構成されています。データ主権の層では、学習や推論に用いる情報を国内で管理し、国外移転や第三者アクセスを制御します。

インフラ主権の層は、計算処理を担うサーバーや半導体、データセンターを自国での管理下に置く考え方です。ソフトウェア主権の層では、AIアルゴリズムや学習済みモデルを自ら開発・制御し、更新情報や利用条件を独立して決定します。

これら3層を一体として管理することで、外部依存を抑えたAI運用が実現します。

ソブリンAIのコアバリュー

ソブリンAIの中核にあるのは、AIの設計や運用方針を自ら決定できる自己決定権です。従来のAIサービスと異なり、ソブリンAIは外部事業者のサービス終了や利用規約の変更、提供条件の見直しによって、業務や行政運営が左右されにくい構造を持ちます。

また、適用される法律やガイドラインを各国の法制度や社会規範にあわせて調整でき、法的・倫理的に整合性を保った運用が可能です。加えて、学習データの範囲やモデル構造、判断プロセスを把握できます。結果として、判断根拠が明確な形でのAI運用が成立し、透明性の確保につながります。

なぜソブリンAIが世界中で求められているのか

ソブリンAIが注目される背景には、AI基盤を国外に依存することによる法的・経済的リスクの顕在化があります。各国はAIを単なるツールではなく、国家や産業の持続性に直結する基盤技術として捉え始めています。ここでは、その具体的な理由について解説します。

ハイパースケーラー依存のリスク

現在、多くのAIサービスは、Amazon Web Services や Google といったアメリカ系ハイパースケーラーのクラウド基盤上で提供されています。しかし、アメリカのCLOUD法により、データが日本国内のサーバーに保管されていても、本国の法的要請によって開示対象となる可能性があります。

また、特定企業の利用規約変更やサービス方針転換が、業務基盤そのものに影響を与えるプラットフォーム依存のリスクも指摘されています。こうしたリスク対策の1つとして、各国が独立的に運用・管理できる仕組みの需要が高まっているのです。

経済安全保障とデジタル禁輸への対策

地政学的緊張の高まりにより、GPUなどの計算資源や最新のAIモデルが戦略物資として扱われる傾向が強まっています。特定国からの供給停止が起きた場合、いわゆるデジタル禁輸が発生し、産業活動や行政機能に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

自国内に計算基盤とAIモデルを保持することは、外部環境の急変に備える現実的な手段として注目されています。

ソブリンAIとパブリックAIの比較

ソブリンAIと、生成AIを含むパブリックAIでは、前提となる設計思想やリスクの捉え方が大きく異なります。ここでは、セキュリティ、実用性、コストの3つの観点から両者を比較します。

セキュリティとガバナンス

セキュリティとガバナンスの観点では、信頼の置きどころが両者の大きな違いです。ソブリンAIでは、学習データや入力情報の管理主体が自国内にあり、データの二次利用を明示的に拒否できます。

また、保存場所やアクセス権限、監査体制を自国法や自社ルールに基づいて設計し、運用の透明性を確保しやすい構造です。一方、パブリックAIでは、学習への利用可否や内部処理の内容が外部から見えにくく、利用規約や提供条件の変更に依存します。

実用性と進化スピード

実用性と進化スピードの面では、パブリックAIの方が優位だと言えます。大規模な計算資源と継続的な研究開発により、汎用的な推論能力や最新機能を短期間で提供できます。特に、一般的な業務や情報整理ではOpenAI社やGoogle社のAIサービスで十分なため、ゼロからAIモデルを構築する必要性は低いでしょう。

一方、ソブリンAIは特定分野や特定言語に最適化しやすい点があり、専門業務向けの精度や一貫性を重視する用途に適しています。

コスト面での可能性

コスト構造にも明確な違いがあります。ソブリンAIは、初期の設備投資や人材確保などの固定費が大きくなりやすい一方で、運用フェーズでは費用の見通しを立てやすい点が特徴です。中長期的には利用量の影響を受けにくく、総保有コストを計画的に管理できます。

一方、パブリックAIは初期費用を抑えて用途やシーンに応じた導入がしやすい反面、従量課金が基本のため、利用拡大に伴うコストが増えやすい傾向にあります。

日本におけるソブリンAIの主要プロジェクト

日本では、AIを海外基盤に依存しない体制づくりが、国家戦略として位置づけられています。ここでは、日本における代表的なソブリンAI関連プロジェクトを紹介します。

経済産業省

経済産業省は、経済安全保障推進法の枠組みを通じて、AI基盤の国内確保に向けた大規模な支援を進めています。この取り組みには、GMOインターネットグループやKDDIなど国内の大手事業者も参加しており、海外依存を前提としない計算リソースの確立を目指しています。

また、産業技術総合研究所を中心に、NVIDIAなどとの連携を通じて、ABCI 3.0と呼ばれるAIスーパーコンピューターの構築も進行しています。研究基盤の整備とともに、国内のAI開発力強化に政府を挙げて力を入れています。

ソフトバンク

ソフトバンクは、ソブリンAI戦略の中核として「フィジカルAI」構想を推進しています。AIによる判断力とロボットのような物理的装置の動作を統合し、産業現場や社会インフラで自律的な制御・最適化を図る技術です。

また、同社内では、計算インフラや国産LLM、ソブリンクラウド基盤を一貫提供する三層構造の実装に取り組んでいます。2025年9月のイベントでは、国内最大級の分散型データセンター配置計画や、GPUリソースを自社で制御しながら企業向けAIサービスの基盤提供を目指すことも発表されました。

さくらインターネット

さくらインターネットは、前述した経済産業省のプロジェクトに参画している企業の1つです。自社独自の国内最大級のGPUクラウド基盤を整備し、計算リソースの国産化を推し進めています。

2025年10月には、国内完結型の生成AI業務支援サービス「さくらのAIソリューション」をリリースしました。生成AI向けクラウドサービス「高火力」では、基盤モデルと業務アプリケーションを組み合わせた生成AIパッケージを提供します。これにより、クライアントの環境や要望に合わせた開発・導入の支援を一元的に行えます。

富士通

富士通は、2025年12月の技術戦略説明会にて、ソブリンAI支援のための技術開発について発表しました。企業内データの高いセキュリティ性やAI環境のカスタマイズ性など、エンタープライズ向けに求められる要件を満たす「ソブリン・インフラストラクチャー」を提供します。

また、顧客企業向けの「ソブリンAIプラットフォーム」は、LLM(大規模言語モデル)を軽量化・省エネ化した「Takane AI」モデルや、同社独自の「Kozuchi マルチAIエージェントフレームワーク」などで構成されています。企業の特性に応じたクローズド環境でのAI開発・運用を支える仕組みとして位置づけられています。

諸外国・地域におけるソブリンAIの取り組み

ソブリンAIの考え方は、日本に限らず世界各国で政策や投資計画として具体化が進んでいます。ここでは、EU、インド、中国における主な動向を整理します。

EU・欧州諸国

欧州諸国では、アメリカのIT企業への依存から脱却する「テック主権」の確立が明確な政策目標として掲げられています。フランスのマクロン大統領は、AIインフラ整備を主権確保の課題と位置づけ、域内投資の重要性を強調しています。

また、EU全体では、AIを技術的主権の中核と位置づけ、企業によるAI開発や採用の拡大が後押しされています。フランスの「Mistral AI」によるLLM開発や、欧州委員会主導のAIデータセンター計画など基盤整備が進行中です。一方で、資金力やインフラ規模ではアメリカとの差が残されており、継続的な投資が課題とされています。

インド

インドでは、国家AI戦略である「IndiaAIミッション」を軸に、AI主権の確立に取り組んでいます。今後5年間で大規模な公的投資を実施し、人材育成やインフラ構造、国産AIモデル開発を一体で推進する方針です。

また、多言語国家という特性を踏まえ、ヒンズー語を含む複数言語に対応できるLLM開発も進められています。加えて、国内の大規模データセンター群を整備し、公共部門や研究機関が海外クラウドに依存することなくAIを活用できる環境構築も進行中です。

中国

中国は、国家戦略として一貫してAI自立を推進しています。アメリカによる半導体輸出規制を受けて、AIチップやフレームワーク、大規模AIモデルまでを国内で完結させる体制構築が加速しています。

また、国内の大手企業である百度やアリババなどが国産LLMの開発に成功し、国外サービスの代替が実現してきている点も見逃せません。技術自立と統治の双方を重視した上で、データセンターやAIサービスを国家管理下に置く規制も強化され、アルゴリズムや出力内容にも統制が及ぶ見通しです。

ビジネス・各業界への影響

ソブリンAIの広がりは、各業界のIT戦略にも直接的な影響を与えています。金融業界や医療分野では、厳格な個人情報の保護や法令遵守が前提となるため、データを国外に出さないソブリンAI環境での活用が進みつつあります。

また、製造業では設計図や製造条件、ベテラン社員のノウハウといった機密情報を、外部流出のリスクなく活用できる点が評価され、RAG構築も現実的な選択肢となっています。データ主権を前提としたAI活用が、業界横断的に検討される段階に入っていると言えます。

ソブリンAIが抱える課題

ソブリンAIは、主権下での制御やデータ保護を重視する一方で、モデルの性能差やインフラ制約、倫理基準の不一致といった課題も抱えています。ここでは、現時点でのソブリンAIが抱える代表的な課題について説明します。

技術的な進化の必要性

ソブリンAIは、特定領域での活用に最適化しやすい反面、パブリックAIモデルとの性能差は大きい状況です。現時点では、GPT-5.2 などのグローバルモデルと比べ、推論の安定性や知識量、マルチモーダル対応といった面で特に差が出やすい傾向にあります。

次々と新しいモデルが登場する中、差分は機能面だけでなく開発速度にも影響します。国内で継続的にモデルを更新し、評価手法と改善サイクルを回す体制の構築が必要でしょう。

インフラ・リソースの持続可能性

ソブリンAIを安定的に運用するにあたって、データセンターや電力、通信網の確保が長期的な課題です。大規模モデルの学習や推論には、多大な計算リソースと電力が必要です。

また、国内の電力需給や立地制約がボトルネックとならないよう、電力コストの上昇や環境負荷への対応も避けられません。再生可能エネルギーの調達や排熱・冷却、水利用を含めた運用設計を検討する必要があります。

相互運用の確保と標準化

国内完結型のAIモデルとして独自性を追求していく中で、グローバルツールや外部サービスとの連携が困難となり、孤立化するリスクが生じます。特に国際取引や越境サービスでは、データ形式やAPI、認証、監査ログなどの共通仕様が必要です。

相互運用を確保するためには、国内の複数基盤間における標準化が重要です。ISOやIEC、ITUなどの国際標準と整合させつつ、最低限の互換性を維持する設計が求められます。

倫理・ガバナンスの不一致

ソブリンAIは、各国の法制度や価値観を反映しやすい一方で、倫理基準の国際的な違いが摩擦を生む可能性もあります。表現の自由やプライバシー、差別、監視の許容範囲など、国ごとに前提が異なり、入力は同じでも出力や制御方針は変わります。

特に越境利用や共同研究、国際企業による統合運用では、この問題が顕在化しやすい傾向にあります。各国の評価枠組みを参照しつつ、共通化できる基準をどのように設けるか十分に検討することが重要です。

ソブリンAIの未来とAI開発のゆくえ

すべてをソブリン化するのではなく、重要データをソブリンAIに、汎用業務をパブリックAIに活用する、といった使い分けが標準化していくと見込まれます。政府や規制の厳しい一部の産業を中心に、データ所在地や監査要件を満たす主権型基盤を整備しつつ、外部技術との提携モデルを併存する形での運用が現実的です。

一方で、各国が独自仕様を強めていく中で市場が分断され、開発と運用が複雑化する可能性も出てきます。主権の確保と国際連携を両立させる設計や標準化、契約・ガバナンスの調整が論点となるでしょう。

まとめ

ソブリンAIは、国家戦略やビジネス環境において、重要な役割を果たすAIの概念として世界的に注目度が高まっています。データ主権や法令順守、経済安全保障を踏まえ、各国や企業が、重要データを自らの管理下で扱うAI基盤を整備しています。

ただし、すべてをソブリンAIで内製化するのではなく、用途に応じてパブリックAIとの使い分けを検討する視点も必要です。ソブリンAIの導入では、自社データの性質や規制要件を整理した上で、現実的な構成を選択することが重要です。

アイスマイリーでは、生成AI のサービス比較と企業一覧を無料配布しています。課題や目的に応じたサービスを比較検討できますので、ぜひこの機会にお問い合わせください。

よくある質問

ソブリンAIは「国産AI」の言い換えですか?

ソブリンAIは、単に国内企業が開発した国産AIを指す言葉ではありません。AIの開発・運用やデータ管理が日本国内の法律や規制の下で制御されている点が重要です。技術の出自よりも、管轄と統制の所在が判断基準になります。

ソブリンAIは日本でも利用できる?

日本でもソブリンAIは利用可能です。経済産業省をはじめ、国内クラウド事業者や大手IT企業によるさまざまな取り組みを通じて、国内完結型のAI環境整備が進められています。 また、データを国外に出さずに利用することを前提としたAIサービスや、限定的な用途で実運用段階に入っている事例も見られます。

ソブリンAIの導入を検討すべき基準は?

ソブリンAI導入の判断基準として、個人情報や機密情報の取り扱い、業界規制、監査要件などが挙げられます。加えて、データの国外移転リスクや長期的なコスト見通しを重視する場合にも、有力な選択肢となります。 企業の業務特性やリスク許容度を整理した上で、導入可否を判断することが重要です。

AIsmiley編集部

株式会社アイスマイリーが運営するAIポータルメディア「AIsmiley」は、AIの専門家によるコンテンツ配信とプロダクト紹介を行うWebメディアです。AI資格を保有した編集部がDX推進の事例や人工知能ソリューションの活用方法、ニュース、トレンド情報を発信しています。

・Facebookでも発信しています @AIsmiley.inc
・Xもフォローください @AIsmiley_inc
・Youtubeのチャンネル登録もお願いいたします@aismiley
メルマガに登録する

AIサービス
生成AI
DX推進
DXトレンドマガジン メールマガジン登録

業務の課題解決に繋がる最新DX・情報をお届けいたします。
メールマガジンの配信をご希望の方は、下記フォームよりご登録ください。登録無料です。

お名前 - 姓・名

お名前を入力してください

メールアドレス

メールアドレスを入力してください

AI・人工知能記事カテゴリ一覧

今注目のカテゴリー

生成AI

ChatGPT連携サービス

チャットボット

AI-OCR

生成AI

ChatGPT連携サービス

チャットボット

AI-OCR

AI活用のご相談したい企業様はこちら

03-6452-4750

AI製品・ソリューションの掲載を
希望される企業様はこちら