積水化学と日立、AI活用したMI推進に向け協創

最終更新日:2024/04/05

積水化学と日立製作所が、AI等デジタル技術を活用した材料開発分野での協創を開始しました。

このAIニュースのポイント

積水化学と日立が協創開始
自動でデータを蓄積するデータベース、仮想空間上で実験できるデジタルツインを構築
MIを推進し、市場の多様化・高度化に対応する

積水化学工業株式会社と株式会社日立製作所が、材料開発分野での協創を開始しました。
材料データとAI等のデジタル技術を駆使することで、材料開発におけるMI(マテリアルズ・インフォマティクス)を推進し、新材料開発の加速や研究開発の効率化・高度化を目指します。

社内外の材料開発に関する知見やデータを自動で収集・活用できる環境と、現実と同様に仮想空間上で実験できるデジタルツインを構築予定です。

協創の背景

MI(マテリアルズ・インフォマティクス)とは、統計分析などを活用して材料開発を高効率化する取り組みです。

これまでの材料開発は、研究者の経験や勘に大きく依存し、実用化までに長い時間と費用を要していました。
一方、市場では製品ライフサイクルの短命化、資源の制約などを起点として、材料開発への要求が多様化・高度化しており、その要求に応えるため、世界的にMIへの取り組みが本格化しています。

協創の内容

1. CMOSアニーリングを活用した材料特性の最適条件探索による、材料開発の高度化

日立が開発したCMOSアニーリング(量子コンピュータを疑似再現する技術)を材料開発分野に適用し、効果検証を行います。

新材料開発では、試作と評価などの実験を繰り返し行う必要があるため、時間やコストを要しています。
多数の選択肢の中から最適な条件の組み合わせを予測可能なアニーリング技術の活用により、開発サイクルの短縮・高度化を目指します。

2. AIを用いて材料開発知識の整理を自動化し、多様な知識を蓄積するナレッジベースを構築

日立独自のAIを用いて、社内外のさまざまなデータの整理を自動化、さらに国や研究機関が公開するデータベースと統合して多様な知識を蓄積する「材料開発統合ナレッジベース」を構築、有用性を検証します。

既存データの整理だけでなく、公開データとの統合により不足情報を自動的に補完するほか、AIを用いて情報の不確実性評価を行うことで、情報の信頼性向上を図ります。

研究者が材料開発知識を横断的に検索でき、実験情報の収集工数が低減するとともに、高度な新材料候補の予測が可能となり、材料開発の効率化が期待できます。

3. 実験デジタルツインの構築と実験データ収集の自動化による材料実験業務のDX化

材料開発の現場で行われる実験ワークフローを仮想空間上に再現し、各プロセスの実験データを関連づけ、実験デジタルツインを構築します。
また、実験業務の自動化・リモート化に向けて、実験で用いられる計測装置と実験デジタルツインの連携に向けた検討も行い、材料開発の効率向上に関する効果を検証します。

試料合成や計測など実験過程で生まれるデータを収集し、各データと実験ワークフローを関連づけ、統合的に管理します。
また、データ収集や解析の自動化を目指します。

従来、一元管理の難しかった膨大な実験データを個々に関連付け、俯瞰的な分析を容易にするほか、データ検索やフォーマットの整合作業などの負荷を軽減し、実験結果の解釈や意思決定までのスピード向上が期待できます。
また、実験データの一元化により、研究者間のデータ共有や他の研究でのデータの再利用にもつながります。

積水化学と日立は、今後もさまざまな新技術を適用した共同実証を行い、市場ニーズの把握から材料開発までのリードタイム短縮を目的とした、研究開発のDXおよびMIの推進加速に取り組むとしています。

出典：積水化学