介護×AIで現場を支援!業務負荷を減らす人工知能サービスの活用法
最終更新日:2024/04/11
ここ数年で少子高齢化による人手不足は一気に深刻化しており、多くの業界が人手不足に悩まされている状況です。その中でも介護の現場は、特に人手不足が深刻化している業界のひとつといえるでしょう。
厚生労働省の推計によると、2025年には国民の3人に1人が65歳以上となり、介護人材は37.7万人不足するといわれています。このデータを踏まえると、今後ますます介護の現場における人手不足は深刻化していく可能性が高いのです。
そのため、最近ではAI・人工知能を活用することで人材不足という問題を解消する事例も多くなってきています。今回は、介護の現場におけるAIの効果的な活用法について詳しくみていきましょう。
(参照:11.【参考資料4】日本の人口等関係資料)
(参照:2025年に向けた介護人材にかかる需給推計(確定値)について |報道発表資料|厚生労働省)
AIの活用事例について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
AI・人工知能の利用例を解説!機械学習を活用した身の回りの実用例
介護の現場を支援するAI活用法
人材不足が特に深刻化している介護現場においてもAIを活用するケースが多くなってきています。その一例として、福岡市の事例が挙げられるでしょう。福岡市では、民間会社によるAIを活用したケアマネージャー支援の実証実験が始まっています。このケアマネージャー支援とは、ケアプランの作成業務を支援するアプリケーションを活用することで、ケアマネージャーの業務効率化を図るというものです。
ちなみに、このAI搭載型のアプリケーションを活用したことにより、ケアマネージャーの業務効率化を実現するとともに、より質の高い介護サービスの提供を行えるようになったといいます。
また、愛知県豊橋市でも、2018年からAIを活用したケアプラン作成が開始されました。豊橋市が導入したのは、ケアデザインAIの「CDI Platform MAIA」というシステムです。この「CDI Platform MAIA」を活用し、これまでに蓄積された8年分の介護データ(約10万件)やケアマネージャーの現場ノウハウを学習させることで、自立支援に役立つケアプランを作成できるようになったといいます。
(参照:「AI」(人工知能)がケアプラン作成支援!期待高まるAI・介護ロボットの動向に注目|みんなの介護ニュース)
AIを搭載した介護ロボットにも注目が集まる
また、最近ではAIを搭載した介護ロボットにも大きな注目が集まっています。介護ロボットとは、生活面の介護が必要な人(要介護者)を補助し、介護する人(介護者)の負担を軽減させることを目的としたロボットのことです。高齢化が加速しているものの、介護スタッフは不足しているという現状があるため、在宅の介護者が陥りやすい介護疲れを解消する役割として、介護ロボットへの期待が高まっています。
特に、大人の要介護者は体重があるため、支えながら歩いたり、抱き抱えて移動したりすると、介護者にも大きな負担がかかってしまいかねません。その点、それらの動作を介護ロボットに任せることで、介護者の身体的負担と精神的負担を大幅に減少させることができるのです。
また、要介護者としても、介護者に大きな負担をかけてしまうことに対して「申し訳ない」という気持ちが生まれてしまい、それが精神的な負担につながってしまうケースは少なくありません。しかし、介護ロボットであれば人間のように気を使う必要がなくなるため、精神的な負担も軽減させられるというメリットがあるわけです。
さらに、最近ではAIを搭載した介護ロボットも多くなってきており、感情表現の精度も少しずつ向上されてきています。国内外で行われた実証実験の結果によれば、「パロ」というアザラシ型ロボットを活用することで、アニマルセラピーと同じような効果が得られたそうです。そのため、介護ロボットは要介護者の精神的なケアを行う存在としても活躍することになるかもしれません。
こういったメリットを持つ介護ロボットの普及が進めば、介護者の業務効率を向上させることが可能になります。人手不足の解消や人件費削減といった課題の解決にもつなげられるでしょう。
介護ロボットにはいくつかの課題も
介護ロボットには多くのメリットがあることがお分かりいただけたかと思いますが、決してメリットばかりというわけではありません。いくつか大きな課題もあり、それが導入の妨げとなってしまっているのです。
最も大きな課題として挙げられるのは、導入コストが高いという点でしょう。介護ロボットはまだまだ普及率が低いため、介護ロボットの単価も高いのが現状です。また、活用事例も少ないため、「本当に有効活用できるのだろうか」といった不安を拭い切れていない人も少なくありません。
ちなみに、厚生労働省が実施した調査によれば、介護ロボットの導入に至っていない理由として最も多かったのが「導入する予算がない」という回答であり、その割合は59.3%に上りました。
また、介護ロボットは大型のものが多く、保管や設置スペースの確保が簡単ではないという点も大きな課題のひとつでしょう。厚生労働省や経済産業省、そして介護業界が一体となって介護ロボットの開発・実用化を推進している状況ではありますが、まだ本格的に多くの介護現場で介護ロボットが導入されるのは先の話になるかもしれません。
(参照:介護ロボットの 開発と普及のための取り組み|厚生労働省)
健康状態を見える化するAIが活躍中
介護ロボットの導入は少々ハードルが高いものの、AIを活用したサービスは介護現場でも多く活用され始めています。その一例としては、24時間365日健康状態を「見える化」できるAIが挙げられるでしょう。
これは、介護施設に温感センサーなどを設置することで介護施設内の要介護者を見守り、異常が起きた場合にすばやく通知するというものです。介護施設内にセンサーを設置することによって、入居者がどこにいても「体温」「心拍数」「位置情報」といったデータをリアルタイムで取得できるようになります。
これまでは人が確認しなければならなった情報をAIが自動で「見える化」してくれるため、カメラで監視されているような不快感を感じさせることはなく、高齢者の見守りを行えるようになるのです。
また、カメラではなくセンサーで見守りを行うため、入居者のプライバシーを守れるという点も大きなメリットといえます。AIを搭載したセンサーでは、「起床」「転倒」「睡眠の質」「食事量」「トイレのタイミング予測」といったものを遠くから把握できるため、介護施設で働くスタッフの業務効率化にもつなげることが可能です。
人手不足が深刻化する介護業界において、介護するスタッフの負担を軽減できるかどうかは、極めて重要なポイントです。しかし、効率化を重視するあまり、要介護者の身体的・精神的負担が増してしまえば意味がありません。両者の課題を解決する手段のひとつとして、AIを活用したサービスの活用は効果的といえるのではないでしょうか。
AIについて詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
AI・人工知能とは?定義・歴史・種類・仕組みから事例まで徹底解説
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