新型コロナウイルスの影響考慮した2024年までの国内AIシステム市場の支出額予測
最終更新日:2024/04/11
近年は多くの企業がAI・人工知能を導入し始めており、AIによって業務効率化を図ったり、サービスの品質を向上したりする動きがみられます。そのため、私たちの生活においてもAIがより身近な存在になりつつある状況といえるでしょう。
そんなAI市場ですが、具体的に国内のAIシステム市場規模はどのように推移しているのでしょうか。今回は、国内のAIシステム市場予測について詳しくご紹介するとともに、よりAI活用が顕著になる業界などについても解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
国内AIシステム市場予測、2024年は3458億8600万円
2020年6月1日、IT専門調査会社のIDC Japan株式会社は2024年までの国内AIシステム市場予測を発表しました。この発表によると、2024年にはAIシステム市場規模が3,458億8,600万円になると予測されています。
(参照:国内AIシステム市場の支出額予測 出典:IDC Japan)
2019年時点での国内AI市場規模は、エンドユーザー支払額ベースで818億4400万円であり、前年比成長率としては56.0%という数字でした。この数字をさらに分野別に示すと、AIシステム市場のうち57.0%を占めているサービス市場が前年比59.5%と大幅に増加しているため、これが大きな成長をみせた要因として考えられます。多くの企業でAIの実証実験が行われたり、実際のシステムへの展開が行われたりしたことが、サービス市場の成長につながった理由といえるでしょう。
また、AIアプリケーションの需要が増加したことによって、ソフトウェア市場も前年比52.4%増となりました。ハードウェア市場に関しても、AIの学習や推論に必要となる高性能コンピュータの需要が増えたことで、前年比51.1%増となっています。
そして、2020年の市場規模は1,172億1,200万円、前年比43.2%となる見込みであることも発表されました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大に伴いAIプロジェクトが停滞し、サービス市場とソフトウェア市場の成長は一度減速してしまうものの、2021年にはその反動と経済の回復によって前年比45.7%増になることが予測されています。
これらを踏まえ、2019年~2024年の年間平均成長率は(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は33.4%で推移し、2024年には市場規模が3,458億8,600万円に成長していくと予測されているのです。新型コロナウイルスの影響により市場が停滞してしまっているケースも少なくありませんが、AI市場に関しては今後再び勢いを取り戻す可能性が高いことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
AIを導入することで期待できる効果(メリット)
では、実際にAIを導入した場合、その企業はどのような効果(メリット)を得ることができるのでしょうか。AIでできることは多岐にわたるため、当然得られる効果もさまざまなものがありますが、特に大きなメリットとして考えられるのは「業務効率化」と「人手不足の解消」でしょう。
昨今の日本では働き方改革が進められており、従業員一人ひとりの負担を増加させて生産性を高めるという考え方は現実的ではなくなりました。長時間労働やサービス残業なども廃止される動きがあり、「一人ひとりが働きやすい環境」が求められるようになってきているのです。そのため、従業員に多くの負担がかかるような労働環境の企業は、今後ますます働き手が離れていってしまう可能性のほうが高いでしょう。
その点、AIを導入している企業であれば、これまで人の手で行っていた作業もAIに任せることができるため、従業員の負担が増加してしまう心配もありません。むしろ、「AIに任せられる仕事」と「AIには任せられない仕事」の棲み分けがより明確化され、人間にしかできない仕事だけに集中できる環境を整えていくことができるのです。そのような業務にやりがいを感じるという人も多いため、従業員一人ひとりの「充実感」を高めることにもつながっていくのではないでしょうか。
そして、AIを導入することによって人手不足問題を解消できるという点も大きなメリットといえます。現在、日本では少子高齢化が進んでおり、同時に人手不足も深刻化している状況です。技術職においては高度な知識や経験が求められるため、AIの導入によって効率化を図るのは難しいのではないかと考えられていましたが、近年はAIによるロボット技術が進歩しているため、技術職の人材不足緩和も実現できるようになりつつあります。実際、大手ゼネコンや物流業界などではAIを導入する事例もみられています。
民間企業だけでなく自治体でもAIの導入が進む
多くの企業でAIが導入され始めていますが、実はAIの導入が進んでいるのは民間企業だけではありません。自治体でもAIの導入が進んでいる状況です。その一例としては、滋賀県大津市の自治体が挙げられるでしょう。
(参照:ホーム/大津市オフィシャルサイト)
大津市で導入されているのは、市民からの問い合わせに自動回答する「AIチャットボット」です。基本的に自治体では公式ホームページが設けられており、そのホームページ内に多くの情報が網羅されているのですが、インターネットに慣れていない人にとって、多くのページの中から必要な情報を探し出すことは決して簡単ではありません。そのため、同じような質問がいくつも寄せられるというケースが多々あるのです。
そのような場合に、チャットボットを設置しておけば、担当者が一つひとつの質問に回答する必要がなくなり、チャットボットに対応を任せることができるようになります。そして、その担当者は他の業務に時間を使えるようになるため、より一層業務効率化を進められるというわけです。
もちろん、AIを導入している自治体は滋賀県大津市だけではありません。福岡県糸島市や北海道岩見沢市など、多くの自治体で導入されていることからも、AIシステム市場規模は年々拡大しているということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
AIシステム市場の拡大によって、さらに利便性の高い社会へ
今回は、AIシステム市場予測について解説するとともに、AIの導入で期待できる効果や自治体でのAI導入例などをご紹介しました。新型コロナウイルスの影響によって市場の成長は停滞するものの、2021年以降は再び勢いを取り戻す可能性が高いということがお分かりいただけたかと思います。
企業や自治体などで幅広く活用されているAIは、今後さらにさまざまな形で活躍していくことが予想されます。AI技術がどのような成長をみせていくのか、ますます目が離せません。
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