Azure OpenAI Serviceとは?利用方法・活用例をわかりやすく解説
最終更新日:2024/01/15
OpenAIが手掛けるChatGPTが世界中で旋風を巻き起こしている中、Googleなど他社でも大規模言語処理モデル(LLM)の開発・改良に力を入れています。2023年1月に一般提供が開始されたMicrosoft社によるOpenAIサービス「Azure OpenAI Service」は、GPT-3やChatGPT(GPT-3.5 Turbo、GPT4)をAzureプラットフォーム上で利用できるなど利便性や性能の高さが魅力で、話題を集めています。
本記事では、Azure OpenAI Serviceの特徴やメリット、対応している言語モデル、申請方法などについて詳しく解説します。OpenAI APIとの違いや企業での活用事例など、ビジネスユースを検討する上で役立つ情報も網羅していますので、AI言語モデルの導入や活用を考えている方はぜひ参考にしてください。
OpenAIについて詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください。
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Azure OpenAI Serviceとは?
Azure OpenAI Serviceとは、Microsoft社のクラウドサービス「Microsoft Azure」において、OpenAIが手掛けるオープンソースのAI(人工知能)を利用できるサービスです。
GPT-3やChatGPTなど対話型AIモデルで有名な米国の非営利団体「OpenAI」と、Microsoft社が共同開発したサービスで、Azureのインフラストラクチャを利用して、OpenAIのAIモデルにアクセスできます。
Azure OpenAI Serviceは、AI技術やデータサイエンスのスキルや知識を持たないシステム開発者でもアプリケーションを構築できるサービス「Azure Cognitive Services」の一部に組み込まれています。機械学習に関する知識不要で、AIモデルをアプリケーションへ組み込むことが可能で、質問応答やテキスト要約、ドキュメント翻訳など多くの自然言語処理(NLP)タスクを実行できます。
Azure OpenAI Serviceの価格
Azure OpenAI Serviceでは、従量制の課金モデルとモデルごとの単価により、コストの最適化を実現しています。自社に合わせた企業ソリューション向け価格をカスタマイズ可能です。
東日本リージョンでの見積もり料金は、以下のように設定されています。ただし、実際の価格は契約や購入日、為替レートなどにより変わる場合があります。
【言語モデル】1,000トークンあたり
モデル | コンテキスト | プロンプト | 完了 |
GPT-3.5-turbo | 4K | ¥0.2245 | ¥0.2993 |
16K | ¥0.449 | ¥0.599 | |
GPT4 | 8K | ¥4.489 | ¥8.977 |
32K | ¥8.977 | ¥17.953 |
【ベースモデル】1,000トークンあたり
モデル | 完了 |
Babbage-002 | ¥0.0599 |
Davinci-002 | ¥0.2993 |
【微調整モデル】1,000トークンあたり
モデル | コンピューティング時間あたりのトレーニング | ホスティング1時間 | 入力使用量 | 出力使用量 |
Babbage-002 | ¥5,086.570 | ¥254.329 | ¥0.0599 | ¥0.0599 |
Davinci-002 | ¥10,173.140 | ¥448.815 | ¥0.2993 | ¥0.2993 |
GPT-3.5-turbo | ¥15,259.710 | ¥1,047.235 | ¥0.2245 | ¥0.2993 |
【埋め込みモデル】1,000トークンあたり
モデル | 標準 |
Ada | ¥0.014961 |
画像モデル・音声モデル:要確認
OpenAI APIとの違い
Azure OpenAI Serviceは、セキュリティ面や管理機能に関してOpenAIのAPI(エンドポイント)と違いが見られます。Azure OpenAI Serviceでは、ユーザーは「Azure OpenAI Studio」の操作環境にて、OpenAIの言語モデルを使用することが可能です。
SaaSではなくAPIとして提供されており、認証には「Azure OpenAI API KEY」もしくは「AzureAD」が必要です。また、アクセス制御(IAM)や監視といったMicrosoft Azureのセキュリティ機能も使用できます。
さらに、Azure OpenAI Serviceでは、インターネット接続だけでなく、プライベートネットワークも選択可能です。強固な安全性が確保された環境で、ChatGPTなどのAIサービスを利用したい場合に有利といえます。
また、Azureと同じポータルで管理できるため、すでにAzureを導入、運用している企業はスムーズに利用できるでしょう。
Open AIに関する記事は、こちらをご覧ください。
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Microsoftが考える「責任あるAI」
Azure OpenAI Serviceはまた、Microsoft社が考える「責任あるAI」として提供されている点も重要です。Microsoft社では、人を第一に考える原則に基づき、AI開発に取り組んでおり、あくまでも「責任あるAI」として「Azure OpenAI Service」を社会に提供することを目的としています。
LLMなどの言語モデルには大きなポテンシャルがあるものの、不正確で有害なコンテンツが生成されるリスクを避けるためには、慎重な設計と深く練られた軽減策が必要であることを認識しています。
また、悪用や意図しない害への対策に多大な投資を行っています。AIの適切な使用に関するMicrosoftの原則を取り入れる、顧客サポート用のコンテンツフィルターを構築する、といった対策がその例です。
Azure OpenAI Serviceの利用には申請が必要
Azure OpenAI Serviceを利用するためには、申請が必要です。Microsoft社は、需要の高さや今後の製品の機能強化、「責任あるAI」へのコミットメントといった側面を考慮して、現在アクセスを制限しており、現在のところ、Microsoft社とすでに取引のあるパートナー企業やクライアントを中心に利用できる状況にあります。
具体的な申請情報はフォームに記載されているので、内容に沿って必要事項を入力しましょう。ただ、申請審査では、ドメイン情報と所属組織の情報がチェックされ、情報が一致しないなど正確性に欠けると判断された場合、追加の書類提出が求められる可能性があります。
2023年7月にはAzure OpenAI Serviceが日本リージョンで使用できるようになりました。モデル提供は、GPT-3.5-TurboとGPT-4、埋め込みモデルに限られます。
Azure OpenAI Serviceで利用できる言語モデル
Azure OpenAI Serviceでは、GPT-3などOpenAIが開発した複数のAIモデルを使用できます。現在対象となっている言語モデルは、以下の通りです。
- GPT-4(入力画像を解析して内容を文章で出力)
- GPT-3(Ada、Babbage、Curie、Davinciを含む)
- GPT-3.5 turbo(ChatGPTで採用されているモデル)
- Codexシリーズ(自然言語のコード変換やコード理解、生成が可能)
- DALL-Eシリーズ(自然言語からオリジナル画像を生成)
- Whisper*(音声ファイルの文字起こしや対話型音声対応)
- 埋め込みシリーズ(機械学習モデルとアルゴリズムで利用できる特殊形式)
*Whisper(ささやき)モデルは2023年11月現在プレビュー段階
アメリカ現地時間の2023年3月には、GPT-4のプレビュー利用が開始されていました。また、OpenAI の最新の画像生成モデル「DALL-E 3」のプレビュー利用もスタートしています。
世界中のすべてのリージョンで、上記の全モデルを使用できるわけではありませんが、多くの言語モデルが利用できることがわかります。
Azure OpenAI Serviceを使ってできること
Azure OpenAI Serviceは、自社サービスの強化や、社内チャットボットの構築といった用途で使用でき、業務効率化や生産性の向上といった効果が期待できます。ここでは、Azure OpenAI Serviceのビジネスにおける2つの用途について説明します。
自社サービスの強化
Azure OpenAI Serviceを用いることで、API連携による自社サービスの強化を図ることが可能です。従来のようなAPIや複数のサービスを組み合わせたアプリ開発による実装が不要で、GTP-4をはじめ、OpenAIが公開している多彩な言語モデルを利用できます。
システム開発やプログラミングのような専門知識を持たない人でも短時間でAIモデルに自社データを組み込めるため、業務効率につながります。
例えば、マーケティングやセールスの部署では、販促用SNSコンテンツやプレゼンのシナリオをChatGPTに作成してもらうことが可能です。また、高いセキュリティが確立されたAzure内でChatGPTと自社データを連携できるため、機密情報の保護にも役立ちます。
社内チャットボットの構築
Azure OpenAI Serviceで使用できるAIモデルを用いて、社内チャットボットを構築することで、各部署における業務フローの改善や効率性の向上といった効果が期待できます。
例えば、システム開発企業において、カスタマーサービスのログの中からクレームをチャットボットを使って抽出し、問題点を見つけて工程の改善を促すことが可能です。また、事務用マニュアルなどをチャットボットと結びつけておけば、必要な情報を検索により即座に見つけられるでしょう。
質問をチャット形式で入力し、ファイル検索結果とAzure OpenAI(ChatGPT)を組み合わせた回答を返す仕組みの、Azure OpenAI Serviceチャットボット構築サービスは、すでに提供が開始されています。
Azure OpenAI Serviceのビジネス活用例
ここからは、Azure OpenAI Serviceのビジネス活用例を紹介していきます。すでにAzure OpenAI Serviceをビジネスに導入、運用している企業がどのような用途やシーンで活用しているのかを参考に、自社への導入方法の検討に役立ててください。
会話言語からコード生成が可能
Microsoft社は、コードや数式の書き方不要でアプリ開発ができる顧客向けGPT-3搭載製品を、開発者会議(Build)にて発表しています。サービスは、アプリケーション構築を支援するローコードアプリ開発プラットフォーム「Microsoft Power Apps」内に統合される予定です。
例えば、社員が「名前が「赤」で始まる商品を探して」といった会話形式の入力を用いて、プログラミング目標を説明できます。ファインチューニング(微調整)されたGPT-3モデルにより、会話形式で記述されたコマンドをオープンソースプログラミング言語(Microsoft Power Fx)の数式に自動変換させることも可能です。
よって、コーディング経験がほとんどない人からプロのデベロッパーまで、幅広いユーザーが簡単にコードを生成でき、いわゆるノーコードツールとしての役割も果たすことが見込まれています。
作業中のエディタから新たなコードと関数全体を提案
GitHub Copilotでは、Azure OpenAI Serviceを導入して、作業中のコードから新たなコードや関数全体を提案することが可能です。
「あなたのAIペアプログラマー」というコンセプトのGitHub Copilotは、OpenAIの事前学習済み言語モデル「Codex」を採用しています。編集中のエディタからコメントやコードから文脈を読み取り、Pythonなどで個々の行や関数全体を提示します。
入力に応じてコードの記述方法に適合することで、より速く、無駄のないコーディング作業をサポートしています。
GitHub Copilotは、Visual StudioやVisual Studio Code、Neovim、JetBrains IDEsなどユーザーが使うエディタの統合開発環境(IDE)の拡張機能として利用可能です。
顧客レビューをカスタムコンテンツに変換
アメリカ最大の中古車小売業者であるCarMaxでは、Azure OpenAI ServiceのGPT-3モデルを導入し、カスタマーレビューの要約からWebコンテンツを作成、提供しています。
約45,000台分ものカスタマーレビューに含まれる膨大なキーワードを抽出し、要約をAIモデルで生成して、Webサイトコンテンツへと落とし込みます。その結果、購入希望者によって有益な情報をすぐに見つけられる状態を実現しています。
Azure OpenAI Serviceを利用するメリット
Azure OpenAI Serviceを利用するメリットとして、安全性の高いAIサービスが利用できる点や多彩なAIツールを活用できる点、そしてクラウドベースによるスムーズな導入が実現できる点が挙げられます。それぞれのポイントについて詳しく解説します。
安全でセキュアなAIサービスが利用できる
Azure OpenAI Serviceは、Microsoft Azureの高度なセキュリティで保護されており、機密性の高い環境でAIモデルを利用できます。社外秘データを扱う機会の多い企業では、特に厳しいセキュリティポリシーをクリアする必要があるため、クラウドベースのプラットフォーム選びが難航することも少なくありません。
Azure OpenAI Serviceではインターネット接続以外に、プライベート接続の選択が可能です。また、アクセス制御(IAM)や監視などのセキュリティ機能も使用できます。OpenAIによるAIモデルを利用して開発を行うチームにとって大きなメリットといえます。
様々なAIツールを活用できる
Azure OpenAI Serviceで使用できる言語モデルは、GTP-3やChatGPTだけにとどまりません。それ以外にも、Codexや埋め込みツールなど多様なAIモデルとツールが備わっており、多くのプログラミング言語やフレームワークに対応しています。
そのため、テキスト生成や機械翻訳といったLLMの基本機能に加えて、プログラミングコードの自動生成や画像生成など幅広いタスクに対応可能です。AIアプリケーション構築やデプロイが効率的に行えます。
スムーズな導入が可能
Azure OpenAI Serviceはクラウドベースのサービスなため、スムーズな導入が実現します。Azure OpenAI Serviceを搭載しているMicrosoft Azure内では、クラウドサービスとして提供されており、導入にあたってハードウェアやソフトウェアを別途用意する必要はありません。
ChatGPTをはじめとするLLMのようなサービスは、大規模な容量が必要ですが、Azure OpenAI Serviceならリソース追加も短時間で完了できるため、スケーラビリティにも優れています。
Azure OpenAI ServiceでChatGPTを利用する流れ
Azure OpenAI Serviceを利用するおおまかな流れは、以下の通りです。
- Azureサブスクリプションの作成
- Azure OpenAI Serviceへのアクセス申請
- GPTモデルの利用申請
- リソースの作成とモデルのデプロイ
アクセス申請は、「Request Access to Azure OpenAI Service」申請フォームの画面上で、必要事項を入力して送信します。Microsoft社から承認メールが届いたら、続けてGPT-4など希望するGPTモデルの利用申請を行い、審査後に認可されたGPTモデルが利用できます。
アクセスを取得した後、AzureポータルにログインしてAzure OpenAIリソースを作成し、モデルをデプロイすることが可能です。
Azure OpenAI Serviceで利用するモデルに学習させる方法
Azure OpenAI Serviceで利用する言語モデルは、微調整(ファインチューニング)と呼ばれるプロセスにより調整が可能です。個別データセットに合わせて、使いやすいようにモデルを調整するために、以下のステップを実行します。
- トレーニングデータと検証データを準備する
- Azure OpenAI Studio内「Create customized model(カスタマイズモデルの作成)」ウィザードを使ってカスタマイズモデルをトレーニングする
- カスタマイズしたモデルの状態を確認する
- カスタマイズしたモデルをデプロイする
- モデル使用後、パフォーマンスを分析、適合を確認する
トレーニングデータだけでなく、必要に応じて検証データや微調整ジョブの詳細オプションを使用します。特定のプロンプトと構造でトレーニングすることで、少ない学習アプローチで改善が施されます。
微調整されたモデルでは、より多くのタスクが短時間で完了され、得られる結果が向上する可能性があります。結果的に、送信テキストやAPI呼び出し時のトークンが少なくて済み、コストの節約につながります。
Azure OpenAI Service まとめ
Azure OpenAI Serviceは、OpenAIの多彩なモデルへのアクセスと、MicrosoftのAzureが誇る高いセキュリティや地域可用性を組み合わせたAIサービスです。Azureプラットフォームの利便性や信頼性の高さから、多くの企業から注目を集めています。
最近では、利用対象AIモデルにWhisperが追加され、音声認識による文字起こしや対話形式の音声対応も盛り込まれました。
現在は法人のみが利用申請の対象とされていますが、日々目覚ましい進化を遂げているAI業界において、個人利用が近い将来スタートする可能性は十分にあるでしょう。
ChatGPTはAPI連携によって自社サービスへのスムーズな組み込みが可能です。自社に最適なシステムの導入を検討する際に、下記「ChatGPT連携サービス一覧」をご活用ください。
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よくある質問
Azure OpenAI Serviceでは、モデルの微調整に自社データを使用しますか?
Azure OpenAI Serviceでは、モデルを調整するための再トレーニング時に顧客データを使用することはありません。
Azure OpenAIの公式サイトで公開されているプライバシー・セキュリティガイドによると、「Azure OpenAIサービスにおいて、モデルのトレーニング、再トレーニング、改良に顧客データを使用することはない」との記載があります。
Azure OpenAI Serviceの個人利用は可能ですか?
Azure OpenAI Serviceの利用申請に使えるメールアドレスは法人メール限定であり、現時点では個人利用は不可とされています。
先述の通り、高い需要への対応や「責任あるAI」へのコミットメントを考慮して、アクセスが制限されています。Microsoft社のパートナー企業以外は、リスクが低いユースケースや軽減策の取り入れに取り組む法人のみが対象です。
今後の技術発展によって、幅広いニーズに対応できることが確認されれば、個人ユーザー向けの一般公開も実現すると予測されます。
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