AI検査の活用広がる!画像認識技術で製造業の検査・検品を自動化
最終更新日:2024/04/04
ディープラーニング(深層学習)やマシンラーニング(機械学習)を活用したAIによる画像認識技術は、製造業のものづくりの現場をも変えようとしています。中でも、製造業の品質保持の要である検査・検品作業で活躍する画像認識技術やAIの活用事例についてまとめました。
製造業に必須!マシーンラーニングを活用した画像認識AIで製品の外観検査を自動化
日立ソリューションズは2018年10月、製造業向けにマシーンラーニング(機械学習)による画像認識技術で製品の外観検査を自動化するSIサービスを発表しました。
同サービスによって、製造業企業は作業者のスキルに依存することなく外観検査や画像処理業務が行えるようになり、作業員不足やスキルのばらつきといった課題を解決することができます。
同社がSIサービスを導入した背景には、近年の少子高齢化に伴う人手不足や、熟練工の技術継承が深刻化しているという課題がありました。特に目視で行う検査に関しては一人ひとりの経験やスキルに依存しなければならないため、経験が浅い担当者による検査から品質のばらつきが生まれたり、不良品が流出したりといった問題が懸念されていたのです。
そんなSIサービスですが、製造工程の検品・検査作業では以下のような利用方法が考えられます。
精密機器部品の外観検査
部品のキズや汚れ、形状不良などを判別し、高精度の外観検査を行う。マシーンラーニングで異常パターンごとに最適な分析方法を採用。製造作業員のスキルに依存せずとも検査・検品工程の品質均一化や作業効率向上を目指す。
・保守点検業務の効率化
稼働中の製造機器が正常に動作しているか、各種ライトの点灯状態やスイッチのオンオフ状態などを判定する。機器の作動状況の判別が自動化される。
・品番チェックの自動化
コンテナや荷物に記された文字やマーク、品番の画像と製造出荷データと照会し、検品作業・照合作業の工数を低減する。検品作業のチェック漏れも防止できる。
このほか、製造業の現場では、「工事現場や製造現場で働く人の行動を監視カメラで監視し、装備の不備や危険行動をモニタリングする」といった使い方や、「小売業の現場では、過去の商品陳列画像と店舗の売り上げデータを照合し、最適な商品陳列方法を提案する」といった使い方も想定されるでしょう。
(参照:IT Leaders 日立ソリューションズ、画像認識で外観検査を自動化するSIサービス)
キユーピーの製造ラインに「1日100万個以上のポテトをさばく検査ロボット」
また、食品メーカー大手キユーピーの「1日100万個以上のポテトをさばく検査ロボット」も話題を集めています。
同社では、離乳食の材料として1日100万個以上のダイス型(角切り)ポテトを使用しています。ただ、中には茶色く変色したポテトが混じっていることもあります。変色しているだけで食べても人体には問題のない品質のものですが、離乳食という商品の性質上、少しでも購入者の不安を取り除かなくてはなりません。また、その他にもポテトの品質は必ずしも均一ではなく、また品種も数多くあるため、原料の検査作業はなかなか機械化できない分野でした。これまでは、目視による検査員への負担も大きかったといいます。
そこで同社では、マシーンラーニングを活用したAIによる検査プログラムを構築し製造工程に導入。当初は「不良品を見つけ出す」というフローで取り組んだところうまくいかなかったため、発想を逆転させて、マシンに良品のダイズポテトの画像を学習させて「良品を見つけ出す」という運用方法に変更したところ、不良品の選別に成功したのです。
人間による目視では疲労の蓄積によって検査効率が下がっていきますが、機械ならそういったことはありません。実質的に検査速度を2倍に向上させることが可能だといい、同社では今後、離乳食の製造ラインだけでなく、ポテトサラダの製造工程にも同様のマシンを導入して対応する計画です。
(参照:ニュースイッチ キユーピーがAI画像認識でポテト選別)
新光ゴムの画像検査もAIで「誰でも同じ」品質に
昭和26年創業のゴム・樹脂製品メーカーの新光ゴム工業は、2020年からパトスロゴスのAI検査システム「DEEPS」を自動車のクッションゴムのラインに導入しました。片面は人の目で、片面は「DEEPS」でチェックしています。
2015年から外観検査の専用装置を3機種導入していたが、いずれも専用機のため、対象製品の生産が終了すると他に転用がきかないという課題がありました。「DEEPS」はあらゆる部品に転用が可能でベテランでも経験値の浅い新人でもほぼ同じ品質レベル・検査時間の実現と人員について、試算では検査員を3名削減できるほか、研修期間も短縮できると見込んでいます。
製造工程の検査・検品作業はAIの精度向上で導入進む
人間による検査・検品作業では、検査項目になくても目に見えて明らかな不良品であれば不良という判断が下せます。しかし、今の段階でのAIによる検査・検品作業ではそこまでの柔軟さがないのが実情です。そのため、検査効率を向上するには、キユーピーの例のように発想の転換が必要になります。
しかし、ディープラーニングやマシンラーニングが進展するにつれてそうした課題は次第に解消され、製造工程の検査・検品作業へのAI導入も進むことでしょう。
何より、人間の作業には「体調」「モチベーション」「経験」といった要因によって作業の質にムラが生まれるリスクがありますが、AIであればそのようなリスクを心配する必要がありません。ディープラーニングやマシンラーニングが発展すれば、より作業の質を高めていくことが可能になりますので、今後の製造業においてAIが欠かせない存在になっていく可能性は極めて高いでしょう。
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