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スマート漁業とは?水産業でのAI・IoT 活用のメリットや事例・課題を解説

最終更新日:2024/09/25

スマート漁業は、日本の水産業が直面する課題を最新技術で解決する取り組みです。本記事では、スマート漁業の概要から具体的な事例まで詳しく解説します。

漁業関係者はもちろん、新たな技術に関心のある方や、日本の水産業の未来に興味がある方にとって、おすすめです。スマート漁業がもたらす可能性と課題について探ります。

スマート漁業とは

スマート漁業は、最新のICT(情報通信技術)やIoTを活用して、漁業の効率化や持続可能性の向上を目指す新しい漁業のあり方です。水産庁では、この取り組みを「スマート水産業」とも呼び、「ICT、IoT等の先端技術の活用により、水産資源の持続的利用と水産業の産業としての持続的成長の両立を実現する次世代の水産業」と定義しています。

スマート漁業の目的は、日本の水産業が直面する様々な課題を解決することです。具体的には、漁業従事者の高齢化や後継者不足、漁獲量の減少、気候変動による海洋環境の変化などの問題に対応し、より効率的で持続可能な漁業を実現することを目指しています。

引用:水産庁|スマート水産業 

水産業が抱える課題

スマート漁業の具体的な取り組みは、漁業の各段階において様々な形で実施されています。ここでは、主な取り組みについて以下の3つを紹介します。

  • 漁師の人員不足への対応
  • 漁業技術の属人化の防止
  • 養殖の生産性の向上

漁師の人員不足への対応

水産業における深刻な課題の一つに、漁師の人員不足への対応があります。日本の社会問題である少子高齢化の影響は、水産業にも大きな影響を与えています。漁業就業者数は一貫して減少傾向にあり、特に若手の従事者が少なくなっています。

令和2年の漁業就業者数は13万5,660人で、前年比6.3%減少しました。さらに、65歳以上の割合が約5万2,000人と高く、39歳以下の割合は全就業者のわずか18.7%となっています。この状況は、漁業の持続可能性に大きな懸念を投げかけています。

漁業技術の属人化の防止

水産業のもう一つの重要な課題は、漁業技術の属人化の防止です。漁業は長年の経験と勘に基づいて行われることが多く、その技術が特定の漁師に依存してしまう傾向があります。例えば、魚の生息場所の特定や品質の見極めなどの技術は、ベテラン漁師の暗黙知として蓄積されています。

しかし、この知識や技術が適切に継承されない場合、後継者不足とも相まって、漁業の生産性や品質の維持に大きな支障をきたす可能性があります。技術の継承を効率化し、新規参入者でも短期間で習得できるようにすることが急務となっています。

養殖の生産性の向上

水産業における三つ目の重要な課題は、養殖の生産性の向上です。世界的に見ると、健康意識の高まりや生活水準の向上にともない、魚介類の消費量は増加傾向にあります。しかし、水産資源の枯渇が懸念される中、養殖への需要が高まっています。

一方で、日本の漁業者一人当たりの生産性は減少傾向にあり、令和2年の生産額は991万円、生産量は31トンにとどまっています。この生産性の低下は、気候変動による漁業環境の悪化や乱獲による資源の減少、海洋法条約の遵守などが要因として挙げられます。

スマート漁業のメリット

スマート漁業は、ICT(情報通信技術)を活用して漁業活動や漁場環境の情報を収集し、適切な資源評価・管理を促進するとともに、生産活動の省力化や操業の効率化、漁獲物の高付加価値化により、生産性を向上させる新しい漁業のスタイルです。

スマート漁業を導入することで、以下のようなメリットが期待できます。

  • 漁業の生産性を向上する
  • 漁業者の所得を向上する
  • 漁業報告の負担を軽減する
  • 若手への技術継承を効率化する

漁業の生産性を向上する

スマート漁業の導入により、漁業の生産性を大幅に向上させることができます。従来の漁業では、漁場の選定や漁獲のタイミングなどが漁師の経験や勘に大きく依存していました。しかし、スマート漁業では、IoTセンサーやAI技術を活用して海洋環境データを収集・分析することで、より精度の高い漁場予測が可能になります。

漁業者の所得を向上する

スマート漁業の導入は、漁業者の所得向上に大きく貢献します。従来の漁業では、天候や海況の変化により漁獲量が大きく変動し、安定した収入を得ることが難しい面がありました。しかし、スマート漁業では、AIを用いた精度の高い漁獲予測により、より計画的な操業が可能になります。

漁業報告の負担を軽減する

スマート漁業の導入により、漁業報告の負担を大幅に軽減することができます。従来の漁業では、漁獲量や操業位置、海況などの報告を手作業で行っており、漁業者にとって大きな負担となっていました。特に沿岸資源に関するデータ不足や、情報収集の遅れは、適切な資源評価や管理を困難にしていました。

若手への技術継承を効率化する

スマート漁業の導入は、若手への技術継承を効率化する上で大きな役割を果たします。従来の漁業では、ベテラン漁師の長年の経験と勘に基づく技術を若手に伝承するのに多くの時間と労力を要していました。しかし、スマート漁業では、これらの暗黙知をデータ化し、可視化することができます。

例えば、ベテラン漁師の漁場選定や操業方法のノウハウを、海洋環境データや漁獲データと紐づけてAIに学習させることで、若手でも短期間で高度な技術を習得することが可能になります。また、VRやARなどの先端技術を活用した訓練システムを導入することで、実際の海上での危険を伴わずに、様々な状況下での操業を疑似体験することができます。

これにより、若手漁業者の技術習得が加速され、早期戦力化が実現します。

スマート漁業におけるAI・IoTの活用事例

スマート漁業におけるAIやIoTの主な活用事例として以下のことが挙げられます。

  • IoT/データ活用による漁獲量の予測
  • IoT/データ活用による給餌管理
  • ドローン/AI分析による赤潮検知

IoT/データ活用による漁獲量の予測

IoTとデータ活用による漁獲量の予測は、スマート漁業における重要な活用事例の一つです。この技術では、海洋環境センサーやブイ、衛星データなどから得られる水温、塩分濃度、潮流、プランクトン量などの様々なデータを収集します。これらのデータはクラウド上に集約され、AI技術を用いて分析されます。

AIは過去の漁獲データと環境データの相関関係を学習し、現在の環境データから将来の漁獲量を予測します。

参照元:KDDIが取り組むスマート漁業〜ワクワクを地方へ〜

IoT/データ活用による給餌管理

IoTとデータ活用による給餌管理は、養殖業の効率化と生産性向上に大きく貢献するスマート漁業の活用事例です。この技術では、養殖のいけすにIoTセンサーを設置し、水温、酸素濃度、pH値などの水質データをリアルタイムで測定します。また同時に、魚の行動や成長状況も監視カメラやセンサーで記録します。これらのデータはクラウド上に集約され、AIによって分析されます。

具体的な事例として、福井県小浜市のサバ養殖での取り組みが挙げられます。ここでは、KDDIと協力してIoTセンサーを導入し、海洋データ(水温、酸素濃度、塩分濃度)の測定と、漁師の給餌量をタブレット端末で記録・管理しています。

参照元:KDDIが取り組むスマート漁業〜ワクワクを地方へ〜

ドローン/AI分析による赤潮検知

ドローンとAI分析を組み合わせた赤潮検知は、養殖業における重要なリスク管理技術です。赤潮は養殖魚に深刻な被害をもたらす可能性があり、特にクロマグロなどの高価値魚種の養殖では大きな経済的損失につながる可能性があります。

この技術では、ドローンを使用して海面の空撮を行い、同時に海水サンプルを採取します。空撮画像はAIによって分析され、海水の色の変化から赤潮の兆候を早期に検出します。また、採取した海水サンプルもAI分析にかけられ、プランクトンの種類や密度を迅速に判別します。

参照元:KDDIが取り組むスマート漁業〜ワクワクを地方へ〜

スマート漁業の課題

スマート漁業は多くのメリットをもたらす一方で、その導入と運用には複数の課題点が存在します。これらの問題点を認識し、適切に対処することが、スマート漁業の成功的な実施には不可欠です。主な課題として、以下の3点が挙げられます。

  • 初期投資費用が高い
  • データ形式が標準化されていない
  • 現場にITリテラシーの高い人材が少ない

初期投資費用が高い

スマート漁業の導入における大きな課題の一つが、高額な初期投資費用です。IoTセンサー、ドローン、AI分析システムなどの先端技術を導入するには、従来の漁業機器と比べて多額の費用が必要となります。例えば、海洋環境データを収集するためのスマートブイや、養殖場の監視システムなどは、数百万円から数千万円の投資が必要な場合があります。

この高額な初期投資は、特に小規模な漁業者や財政基盤の弱い地域にとっては大きな負担となり、スマート漁業の導入を躊躇させる要因となっています。また、技術の進歩が速いため、導入した機器が短期間で陳腐化するリスクもあり、継続的な投資の必要性も課題となっています。

データ形式が標準化されていない

スマート漁業におけるもう一つの重要な課題は、データ形式の標準化が進んでいないことです。現在、様々なメーカーや開発者がスマート漁業向けの機器やソフトウェアを提供していますが、それぞれが独自のデータ形式や通信プロトコルを採用していることが多いため、異なるシステム間でのデータ共有や統合が困難であり、効率的なデータ活用の妨げとなっています。

例えば、ある会社のIoTセンサーで収集した海洋環境データが、別の会社のAI分析システムと互換性がないため、データを手動で変換する必要が生じるケースがあります。また、地域ごとに異なるシステムを導入している場合、広域での統合的なデータ分析や資源管理が難しくなります。

現場にITリテラシーの高い人材が少ない

スマート漁業の「現場にITリテラシーの高い人材が少ない」という課題は、漁業のデジタル化を進める上で大きな障壁となっています。従来の漁業は経験と勘に基づく技術が重視され、最新のIT技術に触れる機会が限られていました。そのため、多くの漁業従事者にとって、スマート漁業で導入される新しい技術やシステムの操作が難しく感じられることがあります。

この問題に対処するためには、漁業者向けの IT 研修プログラムの実施や、使いやすいユーザーインターフェースの開発が必要です。また、若手漁業者の積極的な採用や、IT 企業との連携を通じて、技術に精通した人材を育成することも重要です。

まとめ

スマート漁業は、IoTやAI技術を活用して漁業の効率化と持続可能性を向上させる取り組みです。人手不足や技術継承の課題に対応し、生産性向上や所得増加などのメリットがあります。IoTデータを用いた漁獲量予測や給餌管理、ドローンによる赤潮検知など、具体的な活用事例も増えています。

一方で、高額な初期投資やデータ標準化の遅れ、ITリテラシー不足などの課題もあります。これらを克服しつつ、スマート漁業の利点を最大限に活かすことが水産業の発展に不可欠です。

AIsmiley編集部

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