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RAG(検索拡張生成)とは?活用例やメリットを解説

最終更新日:2024/11/25

ChatGPTをはじめとする大規模言語モデル(LLM)が浸透している現在、企業利用においては社内データなどを学習した特化型LLMシステムが求められるケースも増えています。LLMの外部データを参照し、情報を取得する手法の1つが「RAG(検索拡張生成)」と呼ばれる技術です。

本記事では、RAGの仕組みやLLMとの関係性、活用するメリットや実装方法などについて解説します。RAGの活用例なども紹介しますので、RAGについて理解を深め自社における効果的な生成AIの導入、運用を実現するためにぜひお役立てください。

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RAG構築が行える生成AIサービスと企業一覧

RAG(検索拡張生成)とは?

RAGは、「Retrieval Augmented Generation」の略で、日本語では「検索拡張生成」と言います。RAGは、検索ベースと生成AIモデルの両方の長所を組み合わせた自然言語処理(NLP)技術のことです。

RAGでは、質問やプロンプトに対する回答を生成する際に、外部データベースから関連する情報を取得(Retrieval)し、回答を生成(Generation)できます。よって、最新情報を反映して正確な回答を生み出します。

また、検索データの要約だけでなく、知識を処理・統合し、人間の言語に近い自然な言葉のやり取りや文脈を反映した説明を作成することも可能です。

RAGシステムの仕組み

RAGでは、検索AIの技術と生成AIモデルを統合し、それぞれの機能が活用されます。RAGを採用したAIシステムでは、既存の情報源から関連情報を抽出するために検索モデルが使用され、生成モデルがすべてのデータを統合し、文脈を反映した適切な回答を生成する流れです。

RAGを活用した回答生成の主なフローは以下の通りです。

  1. ユーザーが入力した質問やプロンプトをベクトル形式にエンコードする
  2. エンコードされたクエリを基に、外部データベースから関連する必要な情報を抽出する
  3. 抽出した情報とユーザーの質問をLLMに渡し、回答を作成する

ユーザーとLLM、データベースを連携するために、オープンソースソフトウエアで提供されている「LangChain」などのAI開発フレームワークがよく使用されています。

RAGとLLM(大規模言語モデル)との関係性

RAGは、LLM(大規模言語モデル)をはじめとする生成AIの短所を抑え、より有益な活用をサポートします。ここでは、RAGとLLMの客観的な関係性と解決できること、解決が難しい課題について解説します。

LLMの基礎知識などについて、詳しくはこちらの記事もご覧ください。

LLM(大規模言語モデル)とは?種類・活用サービス・課題を徹底解説

RAGとファインチューニングの違い

RAGは外部データベースを活用して情報を検索し、その情報を基に生成モデルが応答を作成する手法です。このアプローチにより、常に最新の情報を提供できるのが強みです。

RAGの利点

  • 広範な知識を活用:広大なデータベースから情報を検索し、幅広い知識を共有可能
  • 迅速な更新:データベースを更新するだけで、最新情報を反映可能

RAGの用途

  • 幅広い知識が求められるタスクに最適
  • FAQシステムやチャットボットなどでの活用が効果的

ファインチューニング(Fine-Tuning)とは?

ファインチューニングは、既存のAIモデルに特定のデータを追加学習させることで、特定のタスクやドメインに特化させる手法です。この方法により、精度の高い応答が可能となります。

ファインチューニングの利点

  • 高精度:特定タスクに対して非常に高い精度を実現
  • コスト効率:既存モデルを活用するため、新規開発よりもコストを抑制

ファインチューニングの用途

  • 特定のタスクやドメインに特化したモデルが求められる場面に最適
  • カスタマーサポートセンターや専門分野の文書生成向き

RAGとファインチューニングの比較

アプローチの違い

  • RAG:外部データを検索して生成モデルが応答を作成
  • ファインチューニング:既存モデルに新データを学習させて特定タスクに対応

更新方法

  • RAG:データベースでの更新で最新情報を反映
  • ファインチューニング:新しいデータを使ってモデルを再トレーニング

導入時の判断軸

1.特化タスク

  • 事実ベースのタスクにはRAGが最適
  • 形式や「らしさ」を学習するタスクにはファインチューニングが最適

2.開発リソース

  • データ準備はファインチューニングが大変
  • コード作成はRAGが複雑

3.技術資産価値

  • ファインチューニングは他社模倣が難しく、技術的資産価値が高い
  • RAGはマニュアルそのものに価値がある

RAGが解決すること

RAGにより、最新で信頼性のある情報にアクセスできることに加えて、LLMが抱える課題を解消できるという効果が期待できます。現在のLLMでは、誤った回答をあたかも正しいかのように答える「ハルシネーション」や、「敵対的プロンプト」などのリスクが懸念されています。

LLMは質問に正確に答えることもあれば、学習データからいい加減な情報を吐き出すケースも報告されています。統計的な背景から、単語と単語の関係性を組み合わせるような形で文章を作成できても、意味まではわかっていないからです。

RAGを実装することで、LLMが持つ知識を補うための外部ソースへと誘導し、回答の質や精度を向上させることが可能です。また、最新情報やデータソースへのアクセスが実現することで、回答が正確かどうかをチェックしやすくなり、結果的に信頼性の保証にもつながります。

また、曖昧な表現やモデルが容易に解析できないような複雑な質問に対して「わからない」と回答できる点もメリットです。従来までのLLMでは、学習データを使って間違った回答をひねり出す傾向にありました。RAGにより、LLMが行き詰まったときには一時停止し、わからないと認識させるよう訓練できます。

RAGでも解決できないこと

RAGはLLMの欠点を補完する役割を果たしますが、LLM自体に影響を与えることはありません。RAGでは、LLMの外に外部情報を検索する仕組みを持たせるため、LLMの回答生成の傾向そのものを補正することはない点に注意が必要です。

例えば、技術的な表現を多用して回答させたい、といった場合、RAGに加えて別の学習データを使ってLLMに追加学習させる必要があります。とはいえ、追加学習には高品質なデータが大量に必要となる上、時間や費用も膨大なため現時点で着手できる企業はそう多くないでしょう。

また、RAGの検索モデルは検索エンジンを使うのが一般的ですが、検索精度を上げるためにベクトルデータベースと呼ばれるシステムを使用することがあります。ベクトルデータベースでは、データがベクトルと呼ばれる多次元の数値配列で表現され、ベクトル間の距離でデータの類似性を判断できます。

ベクトルデータベースにより、テキストや画像など非構造化データの検索が従来に比べて高速かつ高精度になりますが、データをベクトル化するためにはLLMを必要とします。この方法も、企業にとって導入のハードルとなる可能性があります。

RAGをAIに活用するメリット

RAGをAIに活用することで期待できるメリットとしては、以下の項目が挙げられます。

  • 検索人工知能と生成AIの統合
  • 学習データや訓練の効率化
  • 応用範囲の拡大

それぞれについて詳しく解説します。

検索人工知能と生成AIの統合

RAGの活用により、検索人工知能(AI)と生成AIの統合が実現し、より高精度なAIサービスが実現します。検索AIモデルでは、新聞記事やデータベース、Webブログ、社内データベースといった既存のオンラインデータベースから情報を抽出できます。ただ、これだけではオリジナリティのある回答を生み出すことは難しいのが実情です。

一方、生成AIモデルでは、文脈の中で最適かつ独創的な回答を生成できるものの、精度を常時保つことに課題があります。このような既存モデルの短所を克服するために、それぞれの長所を組み合わせたRAGが開発されました。

また、多様なデータセットや情報源から検索できるようにすれば、多角的な視点を含む回答を生成することも可能になります。

学習データや訓練の効率化

RAGを使うことで、AIに使用する学習データや訓練の効率化につながります。既存のAIでは、十分に学習を行うために膨大なデータセットを用意し、AIをトレーニングする必要がありました。訓練の時間やコストも多くなり、企業における開発や導入のハードルとなる場合もあります。

そこで、RAGにより、最新情報を効率的に提供できるようになれば、LLMの再学習やパラメーターのアップデートにかかるコスト削減が期待できます。

応用範囲の拡大

RAGにより生成AIやLLMの応用範囲の拡大につながります。RAGではユーザーが入力した質問の文脈やニーズに合わせて、回答をカスタマイズすることが可能です。

検索AIモデルにより関連キーワードの抽出だけでなく、質問の背景や意図、関連トピックなどから文脈を包括的に把握できるようになります。また、既存の生成AIに見られるような一般的な回答ではなく、時系列なども考慮して最適化された回答を生成できるため、活用範囲の拡大につながります。

RAGの主な活用例

RAGを応用できる分野は幅広く、多くの業界で注目されています。ここでは主な活用例を3つ紹介します。

RAGによるチャットボットアプリケーションの導入

RAGは、コールセンターや社内FAQシステムでのチャットボットアプリケーションに役立ちます。RAGにより、外部データベースに格納された製品情報やサービスガイドをリアルタイムで参照できるため、顧客の質問に対して即座に正確な回答を提供できます。

また、RAGを採用することで社内マニュアルや過去の事例から関連情報を収集し、具体的な解決方法を提示することも可能です。従来のように担当者がマニュアルの該当部分を探し、トラブルに対処するやり方よりも、効率的かつ短時間での対応が実現します。

マーケティング・市場調査の支援

RAGは、マーケティングや市場調査の効率化にも貢献します。生成AIが行うリサーチ業務にて、ユーザーの行動履歴や好みなどの関連情報を外部データベースから取得すれば、よりパーソナライズされた商品・サービスの提案が可能です。レコメンデーションシステムとして確立することで、調査にかかる労力を軽減できます。

また、ECサイトやSNSの運用でも、最新のトレンドやアップデート情報を反映した調査結果を組み込みやすくなり、常に最適化された運用が実現します。

大学や研究機関での情報収集と分析の効率化

大学や研究機関では、RAGを用いた論文検索と要約の自動生成が可能です。生成AIを活用した実験計画プロセスの自動化により、人為的ミスや研究計画にかかるコストの削減といった効果が期待できます。

また、RAGが採用されることで担当者がより効率的に情報収集を行えるため、研究品質の向上につながります。さらに、RAGは外部の文献ソースから必要な文章を抜粋する作業をサポートするため、知識を得るプロセスを大幅に効率化できます。

RAGをLLMに実装する方法

RAGを実装する際のおおまかな手順は以下の通りです。

  1. データベースを選定する
  2. 質問・プロンプトをベクトルにエンコードするシステム(Query Encoder)を設定する
  3. 外部データベースから関連情報を取得するシステム(Document Retriever)を構築する
  4. すべての情報を基に回答を生成するシステム(Answer Generator)を設計する
  5. システム性能のテストと調整を行う
  6. 定期的なチェックと改良を続ける

RAGの基本的な実装方法は上記の通りで、各手順において課題を解消し、詳細な計画を持って進める必要があります。

まとめ

RAGは、検索AIモデルと生成AIモデルの長所を組み合わせることで、それぞれを単体で使うよりも高精度かつ正確な回答を活用できる仕組みです。外部データベースからの情報取得を効率化しており、AIチャットボットや言語翻訳など幅広い活用方法が考えられます。

現時点ではRAG技術はまだ進化の途中ですが、リアルタイムでのデータ処理やより高度な自然言語処理での改良により、さらなる活躍が期待できるでしょう。

生成AIサービスの導入を検討する際に、サービス提供企業の一覧をぜひご活用ください。

生成AIのサービス比較と企業一覧

よくある質問

RAGの意味は何ですか?

RAGは「Retrieval Augmented Generation」の頭文字を組み合わせた単語で、「検索拡張生成」を意味します。

RAGは、外部データベースから関連情報を取得(Retrieval)し、質問やプロンプトに対する回答を生成(Generation)する仕組みです。 最新情報や外部の関連データを参照できるため、より正確で精度の高い回答を生み出すことが可能です。

RAGは日本語対応の生成AIで使えますか?

RAGは日本語対応の生成AIでも使用できます。現在は、LLMとLangChainを使ったRAGが一般的で、手元の環境でも試せるケースが多いでしょう。

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