外観検査は、主に以下のような種類に分けることができます。
・製作段階での外観検査
本来の仕様と異なる部分がないか、形状や組み合わせの形などをチェックしていきます。また、図面寸法とも差がないか、変色や色ムラがないか、印刷文字の位置が適切かなどをチェックしていきます。
・表面処理後の外観検査
表面の感触に違和感がないか、また製品によってはシワや曇りがないかチェックしたりします。それに加え、表面の傷や汚れ、異物の付着なども確認していきます。
・製品組み立て後の外観検査
仕上がりの程度を確認したり、欠けている部分がないかをチェックしたりします。このようなかたちで外観検査を行う目的は、「部品(製品)の不良品が出ないようにすること」に他なりません。不良品を出荷してしまった場合、当然その不良品が購入される可能性があります。
上記のような分類方法以外にも、外観検査は「インライン検査」「オフライン検査」という2つの種類に分類されることがあります。
・インライン検査
インライン検査は、主にライン生産方式の工場において用いられる検査方法であり、生産ラインを稼働させている状態で製品を分析するために行う「リアルタイム検査」のことを指します。インライン検査は、さまざまなものを対象に行うことができるのが特徴です。
・オフライン検査
オフライン検査とは、生産ラインの外にある検査工程において行われる検査のことです。生産ラインに検査工程が組み込まれているインライン検査とは異なり、生産ラインの外で検査を行うため、より精密な検査を実施したい場合におすすめの方法といえます。
外観検査でAIを活用した場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。また、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか。メリット・デメリットを詳しくみていきましょう。
外観検査でAIを活用するメリット
・人材不足の解消
昨今は製造業をはじめとするさまざまな業界で人材不足が大きな課題となっています。人材不足を解消するためには、業務効率化や業務自動化が欠かせません。それを実現するための方法として注目されているのが、AIを活用した業務効率化なのです。AIを活用した外観検査システムによって自動化を実現できれば、人材が集まりにくい地方工場でも問題なく稼働できるようになります。
・ヒューマンエラーの防止
人の目による外観検査は、従業員の体調や経験値によって検査の精度に差が生まれてしまう傾向にあります。そのため、どうしてもヒューマンエラーが起こってしまいがちです。
しかし、AIを活用した外観検査システムによって自動化すれば、高い精度を維持することができます。人間のように疲労が蓄積されるわけでもないため、極寒の中作業しなければならないような環境でも高い精度を維持できるのです。
・昼夜関係なく検査可能
人による作業は疲労が蓄積されるため、長時間の稼働は現実的ではありません。特に近年は働き方改革が進んでいるため、長時間労働によって生産性をカバーするという考え方は不適切です。
その点、外観検査システムであれば疲労が蓄積されることはないため、昼夜関係なく検査を行えるようになります。高い精度の外観検査を昼夜関係なく行える点は、大きなメリットといえます。
外観検査でAIを活用するデメリット
・学習期間を設けなければならない
外観検査でAIを活用する場合、一定期間のデータ蓄積と学習が必要になります。導入後すぐに運用開始できるわけではないため、導入する前の段階から「学習期間が必要になること」を把握した上で計画を立てることが大切です。
・適切なシステムを選ばなければ成果につながらない
現在はさまざまな種類のAI製品が存在するため、自社の検査に最適なシステムを選ばなければ成果につながらない可能性があります。そのため、導入前の段階で課題や目的を明確化し、目的を達成するための機能が搭載されている製品を選択することが大切です。
では、実際に外観検査AI製品を導入する場合、どのような点に着目して選べば良いのでしょうか。外観検査AI製品の選び方について、詳しくみていきましょう。
課題目的を明確にする
業務状況を把握した後は、自社が解決したい課題やAIを導入する目的を明確にしていきましょう。この段階では、以下のようにできるだけ具体的な課題・目的を立てていきます。
- 現在2人日かかっている生産ラインで、検査作業を1人日にしたい
- 工場で製造している部品の欠損・劣化を自動検出し、業務効率を改善したい
- 食品への異物混入検査を自動検知に切り替え、検査精度を向上させたい
検査項目を定義する
一般的に、外観検査AIの手法は「良品・不良品の画像データをAIに学習させる」というものです。精度の高い検査を行うためには、外観にどのような特徴があれば不良品に当たるのか検査基準を明確に定めておくことが重要です。
また、通常AIに学習させるデータ収集は人が行うため、データ収集の担当者ごとに検証基準が異らないよう「基準を標準化」させる必要があります。基準設定のポイントは、文字や写真だけで定義するのではなく実物で確認できるよう見本を用意することです。
<見本の種類>
- 標準見本
品質の標準を示した製品見本。
- 限度見本
良品・不良品の限度を示した製品見本。
(良品と不良品の境目を示すための見本であるため、検査基準を満たす程度の誤差を含む。)
- 不良見本
不良品の条件を示した製品見本。
以上を参考に見本を用意し、検査基準を「明確化・標準化」しましょう。
なお、以下の記事では判定可能な製品の例などもご紹介していますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。
AIを活用した外観検査とは?手順やメリット、価格を紹介
検査方法を定める
各検査項目をどのような方法で検査するのか、定めていきます。外観検査基準書には、「検査の頻度」「検査サンプリング数」「測定器」などを記載しておくと良いでしょう。
管理方法を検討
定量化できない項目に関しては、計数値を管理するタイプの管理図を用いて品質管理を行います。この管理図には、「c管理図」「u管理図」「np管理図」「p管理図」という4つの種類が存在するため、外観検査基準書には使用する管理図の種類を記載しておく必要があるでしょう。
ちなみに、使用する管理図の種類は、「管理したいのは不適合数か不適合品数か」「サンプルの大きさを一定にできるかどうか」の2点で決まります。不適合数とは、1つの製品に対して、あるモードの不良となる箇所が何個あるかをカウントした値のこと。不適合品数とは、不良となる箇所を含む製品の数のことです。
不良品の処置方法を定める
不良品が発生したときの処置方法について、具体的な手順を記載します。手直しできるかどうか、不良品の分析は必要なのか、保管する必要はあるのか、といった判断基準の詳細をあらかじめ記載しておくと、不良品発生時の対応もスムーズに行えるでしょう。
該当製品を検討
課題目的・検査項目・検査方法・管理方法を明確化したら、実際に該当する製品を検討していきます。先ほどもご紹介したように、現在はさまざまな種類の製品が存在しており、特徴や機能も大きく異なりますので、上記のポイントを明確化しておくと、自社にとって最適な製品を選びやすくなるでしょう。
アイスマイリーでは、中小企業に向けて工場での外観検査AI導入のための基本から実践的なトピックをまとめた「外観検査AI導入の手引き」を無料で配布しています。
本資料では、見積もりの項目や検査工程設計の考え方など、AIに詳しくない企業様にとっての「わからない」「教えてほしい」というポイントをまとめています。導入を検討される際には、ぜひこちらの「外観検査AI導入の手引き」をご活用ください。
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数ある「外観検査AI」の中から、自社の課題や導入の目的にあった「外観検査AI」を選び出すのは容易ではありません。そんな時に役立つのが、対象と提供形態別にセグメントされた外観検査AIカオスマップです。
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外観検査AIを導入する際は、課題目的・検査項目・検査方法・管理方法などを事前に明確化した上で、適切な製品を選択することが大切です。また、外観検査AIには数多くのメリットがある反面、いくつかデメリットも存在するため、今回ご紹介したポイントを把握した上で、導入を検討していくと良いでしょう。
そして何より、外観検査AIは導入がゴールではなく「スタート地点」である点にも注意が必要です。場合によっては外観検査AIを運用していく中で、「精度がなかなか向上しない」という問題が発生することもあります。そのようなときは、下記のポイントを確認しましょう。
適切なデータを用意する
外観検査AIの精度を左右する大きな要因は「学習させるデータの質と量」です。
一般的に、外観検査AIの精度を向上させるためには、大量の不良品の画像データが必要です。
また以下のようなデータは画質が低いため、学習させる前に調整できないか検討が必要です。
- 画像が明るすぎるもしくは暗すぎる
- 対象物以外のものが写り込んでいる
外観検査AIを導入したけれど期待していた精度に満たない場合は、学習させるデータの質と量の改善をおすすめします。