リスキリングと混同されやすいものとして、「リカレント教育」というものが存在します。リカレント教育とは、それぞれの必要なタイミングで教育を受け、仕事に戻るという取り組みを繰り返す仕組みです。
リカレント(recurrent)は、「循環する」「繰り返す」といった意味を持ちます。通常業務と並行しながら学ぶリスキリングとは異なり、一度仕事から離れて大学などの教育機関で学び直し、再度仕事に復帰するという仕組みのことを指します。
これらを踏まえると、リスキリングとリカレント教育には違いがあることがお分かりいただけるかと思いますが、「新たなスキルを身につけていく」という工程が含まれているという点では同じであるため、そこまで大きな違いではないといえるでしょう。
また、「アンラーニング」という言葉も、リスキリングと似た概念として捉えられるケースが多いです。アンラーニングは「学習棄却」とも呼ばれ、既存の仕事のルーティンを一度棄却して新たなスタイルを取り入れることを指します。棄却(捨てる)ことに重きを置くのがアンラーニングであるのに対し、新たな知識・スキルの蓄積に重きを置いているのがリスキリングと考えると、違いが分かりやすいでしょう。
では、企業や組織がリスキリングを取り入れた場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。また、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか。ここからは、リスキリングのメリット・デメリットについて詳しくみていきましょう。
リスキリングのメリット
・新たなアイデアや事業創出
リスキリングを行うことで、従業員は新しいスキル・知識を習得することができます。そのスキル・知識の習得によって、社内に新しいアイデアが生まれやすくなることは大きなメリットといえるでしょう。
リスキリングを上手く活用できれば、時代の移り変わりによって経営が悪化してしまうリスクを抑えることが可能になります。また、社内に新しい風を吹き込むことができるというメリットもあるため、時代に合わせて進化していくことが求められる企業ほど、リスキリングを行うメリットは大きいといえるでしょう。
・業務効率化
業務効率化を実現できるという点も、リスキリングによって得られるメリットの一つです。リスキリングによって従業員が獲得したスキル・知識をDXに活かしていくことで、よりスムーズに業務を遂行できるようになります。
・採用コストの抑制
リスキリングには、採用コストを抑制できるというメリットもあります。たとえば、DX人材の場合、専門性が高いためどうしても採用コストが大きくなってしまう傾向にあります。また、前職で高い専門性を発揮していた人材であっても、新しい会社でその専門性を同じように発揮できるとは限りません。
その点、リスキリングによって既存の従業員が新たな技術・知識を身につければ、社内異動で充足させることができます。そのため、採用コストを大幅に削減できるようになるのです。
リスキリングのデメリット
・作業時間の損失
リスキリングは就業時間に実施していくことになるため、通常業務の作業時間が減少してしまうというデメリットがあります。これは一見大きなデメリットに感じられるかもしれませんが、長期的な目線で考えると必ずしもデメリットとも言い切れません。
リスキリングの実施によって従業員が新たにスキル・知識を身につければ、より高いレベルで効率的に業務を遂行できるようになる可能性もあるからです。
・導入コスト
リスキリングを実施する場合、必要なスキルを見極めたり、習得したスキルを管理したりするためのコストが必要になります。その導入コストがかかってしまう点は、一つのデメリットといえるでしょう。
また、高度なスキルを身につけさせるためには、それ相応の教育コストがかかってしまうことも注意しなければならないポイントの一つです。とはいえ、その導入コスト以上の成果につながる可能性を秘めていることも事実ですので、しっかりと戦略を立てて導入することが大切になるでしょう。
リスキリングには、多くの種類が存在しています。ここからは、代表的なリスキリングの試験・検定をご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
ITパスポート・統計検定3級
ITパスポートとは、産業構造審議会のワーキンググループで行われた議論をもとに創設された資格のことです。
統計検定とは、統計に関する知識・活用力について評価する資格のことです。レベルに応じて、体系的な統計活用能力が認定されます。
G検定・データサイエンティスト検定
G検定とは、一般社団法人日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施している、AI・ディープラーニングの活⽤リテラシー習得を目的とした検定試験です。AIに関連するさまざまな技術的⼿法、そしてビジネス活⽤に必要な基礎知識を有しているかを確認できます。
データサイエンティスト検定は、データサイエンティストとして必要なスキルを養うことを目的とした検定です。企業の課題を抽出し、アルゴリズムやシステムなどの活用によってデータ分析・分類を行い、課題解決を図っていく必要があるデータサイエンティストに求められるスキルを習得できます。
G検定について詳しくはこちら
E資格・基本情報技術者試験
E資格とは、ディープラーニングの理論を理解した上で、適切な手法によって実装する能力・知識を有しているかを認定する資格のことです。
基本情報技術者試験とは、ITを活用したサービス・製品・システム・ソフトウェアなどを作る人材に必要となる基本的な知識と技能を備え、実践的な活用能力を身に付けているかどうかを確認する試験のことです。ITエンジニアの登竜門とも呼ばれています。
E検定について詳しくはこちら
統計検定2級
統計検定とは、統計に関するさまざまな知識、活用力を評価する全国統一試験です。その中でも「統計検定2級」は、大学基礎科目レベルの統計学の知識の習得度、そして活用のための理解度を問うために実施されています。
応用情報技術者試験・Python3・AWS・GCP・Azure
・応用情報技術者試験
応用情報技術者試験とは、ITを活用したサービス・製品・システム・ソフトウェアなどを作る人材に必要とされる応用的知識と技能を備え、高度IT人材としての方向性を確立しているかどうかを確認する試験です。
・Python3
Python3の学習チェックを行えるPython試験では、基礎試験や実践試験、データ分析試験など、いくつかの試験が設けられています。
・AWS
AWS認定とは、AWSに関連する専門知識の習得度合いを確認する資格試験の総称です。
・GCP
GCPとは、Google Cloud認定資格のことです。Google Cloud のツール・機能・メリット・利用事例といった幅広い知識を実証するCloud Digital Leaderをはじめ、さまざまな認定資格が存在します。
・Azure
Microsoft Azure認定資格は、マイクロソフトの認定資格であるMCP(Microsoft Certification Program)の一つであり、Azureに関する知識やスキルを認定する資格です。
プロジェクトマネージャ試験
プロジェクトマネージャ試験は、プロジェクトの目的の実現に向けて責任感を持ってプロジェクトマネジメント業務を単独もしくはチームの一員として担っていく人材を対象とした試験です。高度IT人材として確立した専門分野を持ち、組織の戦略の実現に寄与することを目的としています。
データベーススペシャリスト
データベーススペシャリスト試験は、独立行政法人 情報処理推進機構)が実施しているIT系の国家資格の一つです。資格を取得することで、データベースに関する専門的な技術力が証明できます。
近年は、リスキリングによってDXを推進する企業も多くなってきました。以下の記事では、実際にリスキリングでDXを推進している企業の事例をご紹介していますので、ぜひこちらも併せてご覧ください。
リスキリングの事例を見る
では、実際にリスキリングを行う場合、どのような試験・検定を選べば良いのでしょうか。ここからは、リスキリングの選び方についてご紹介していきます。
目的の明確化
まずは、目的を明確化することが大切です。現在はさまざまな種類の試験・検定が存在しているため、目的ごとに最適といえる試験・検定は大きく変化します。ゴールまでのプロセスを明確にするためにも、まずは何を目的にリスキリングするのか、深掘りしていくと良いでしょう。
各人材の役割を定義
リスキリングは、あくまで手段の一つに過ぎません。リスキリング自体を目的にしてしまうのではなく、目的を達成するための手段としてリスキリングが重要になるのです。その上で、経営戦略に連動した人材戦略を固めながら、各人材の役割を定義していくことが大切になります。
会社にとって必要なスキルごとのカリキュラムを作る
企業ごとに、求められるスキルは大きく異なります。そのため、自社にとって必要なスキルごとのカリキュラムを作ることで、よりスムーズに従業員がリスキリングを進められるようになるでしょう。
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