IoTの仕組み
近年は、エアコンや冷蔵庫といった各種家電だけでなく、自動車・バス、工場設備など、さまざまな分野のモノにおいて、積極的にIoT技術が活用され始めています。そんなIoTの通信は、主に以下の3つの機器・技術によって成り立っているのが特徴です。
- IoT機器(センサーやカメラなどの小さな機器)
- ゲートウェイ(通信中継機※直接通信する場合は不要)
- クラウドサーバ(IoT機器の情報を集める※IoT機器を制御することもある)
つまり、「IoT機器⇔ゲートウェイ⇔クラウドサーバ」という通信によって、IoTを実現しているということです。「IoT機器⇔ゲートウェイ」の通信手段には無線と有線がありますが、IoTでは無線が主流となっています。そして多くのケースで重要になるのが、IoT機器が充電なしに長時間稼働できることです。そのためIoT機器の通信では、以下のような仕組みが採用されています。
これらの特徴を満たした無線通信技術の総称を「LPWA(Low Power Wide Area)」と呼びます。
IoTによって実現できる機能
IoTの技術によって実現できる機能としては、「遠隔操作」「状態把握」「動作検知」「相互通信」の4つが挙げられます。それぞれの機能について、詳しくみていきましょう。
遠隔操作
IoTにおける代表的な機能として挙げられるのが、遠隔操作です。実際にスマホやタブレットから、自宅のエアコン・照明などを遠隔操作したことがある方も多いのではないでしょうか。
最近では、電源のON・OFFといった簡単な動作だけでなく、温度・風量の調節といった細かな操作まで行えるようになってきています。
状態把握
離れた場所にあるモノ・人の状態を知ることができる状態把握も、IoTの機能の一つです。自宅から離れた場所からでも、自宅のエアコンや照明の状態を確認することができます。そのため、消し忘れを防いで電気代の節約に繋げることが可能です。
また、ペットを飼っている人であれば、ペットの首輪をIoT化することによって運動量や食事量のデータを取得することが可能になります。そしてデータを可視化し、ペットの健康状態を遠隔地からでも確認できるようになるわけです。
愛するペットの体調の異変をいち早く察知できれば、獣医への迅速な相談が可能になるため、重大な病気の防止にも繋げられるでしょう。
動作検知
モノ・人の動きから、現在の状況を把握できる動作検知も、IoTの技術によって実現できる機能の一つです。
たとえば農業の分野では、IoTの活用によって温度・湿度・水位といった栽培環境に大きな影響を与える要素を正確に検知することで、自動で最適な環境に調節できます。また公共交通機関においては、IoTの活用によって、バス停で待つ乗客がバス・電車の運行状況、混雑状況をリアルタイムで把握することも可能です。
相互通信
インターネットに接続したモノ同士がデータの送受信を行うことで、複数の電子機器を自動で動作させる相互通信も、IoTの活用によって実現できる機能の一つです。
代表的なものとしては、スマートホームやスマートビルディングが挙げられるでしょう。AIスピーカーと連携すれば、スピーカーに話しかけるだけでお風呂にお湯を入れたり、照明を点けたり、カーテンを開閉したりできます。
オフィスであれば、制御を自動化してエネルギー消費を抑えたり、入退場の管理を自動化したりすることが可能です。
IoTサービス導入のメリット・デメリット
では、IoTサービスを導入した場合、どのようなメリット・デメリットが生じるのでしょうか。それぞれ詳しくみていきましょう。
IoTサービス導入のメリット
居住空間の快適性が向上する
IoT機器が連携するスマートホームやスマートビルディングによって快適な居住空間を実現できます。
予防医療の発展によるメリットを享受できる
ウエアラブルデバイスによって負担をかけることなく体の状態変化をモニターできます。場所を選ばず連続的にデータを取得できることから、予防医療が大幅に進むと期待されています。
生産・物流技術の向上
生産設備などに設置したIoTで、あらゆる稼働情報を見える化することで、工程管理を改善できます。
公共安全性の向上
IoT機器を活用することで洪水や地震などの災害検知から避難誘導までのスピードが高まっています。また、IoT技術を応用して交通状況をモニタリングして事故を減らすなどの試みも行われています。
IoTサービス導入のデメリット
IoTが普及するほど、必然的に企業もIoTを導入せざるを得なくなります。実際、IoTやAIなどの先進技術を活用して、既存の業界やビジネスモデルを破壊的に革新する「デジタル・ディスラプター」も増えてきました。しかし、自社にIoTを導入するとなると、多くの企業は次のような課題を抱えます。
IoT機器を使いこなす人材の不足
2018年の総務省の調査によると、AI・IoTの導入にあたっての課題として「IoTの導入を先導する組織・人材の不足」と回答する割合が多くを占めました。この割合は諸外国に比べて2倍近いため、日本企業の大きな課題と言えるでしょう。
この背景にあるのは、IoTを活用するにはハードウェア、ソフトウェア、ネットワーク、セキュリティ(サイバー攻撃対策)などの広範囲をカバーできる人材が必要になるためです。また、AIとの連携が必要なケースも多く、AIに関する知識、技術を持つ人材も求められています。
管理運用コストの増加
同じく総務省の調査によると、企業が抱える課題として多かったのが、「インフラ整備や維持管理に関わるコスト」です。これはほかに挙げられた次のような主要課題と重なる部分があることを考えますと、かなり負担が大きいことがわかります。
- ネットワークに接続されたモノが第三者に乗っ取られるリスク
- リアルタイムデータやプライバシー情報の保管
- 既存情報のシステムとの接続性の確保・統合
IoTは企業の日々の業務やビジネスモデルを大転換する可能性を持った先進技術です。それだけに、長期的なビジョンのもとに大規模な投資が必要なケースが多くなります。
データ通信環境の整備
IoT活用のボトルネックになっているのが、電力供給とネットワーク負荷の2つです。
大量のIoT機器を使えば、個々の消費電力が小さくてもトータルの電力は大きくなってしまいます。だからこそ、後述するような低消費電力で長距離の通信が可能な通信技術(LPWA)が求められているわけです。
また、膨大な数のIoT機器がインターネットに接続されれば、現在のネットワークシステムでは通信混雑による問題が起きると予想されています。
このため、次の2つの技術が導入されています。
- IoT機器単体の処理を増やして通信を減らす(エッジAI)
- 高速通信の採用(5G)
IoTサービスの活用事例
現在は、さまざまな分野において積極的にIoTサービスが活用され始めています。具体的にどのような形で活用されているのか、詳しくみていきましょう。
スポーツ業界
スポーツ業界では、センサー内蔵のボールで選手の特徴を可視化するIoTサービスや、自宅でフィットネスバイクのプログラムに参加できるIoTサービスなど、さまざまな形でIoTが活用されています。詳しくは、以下の記事でご覧ください。
スポーツ分野のIoT活用事例を紹介!野球・テニス・フィットネスも
畜産業
NTT東日本が提供しているIoTソリューションでは、事務所や自宅のパソコン、タブレット、スマホなどからインターネットに接続して、手軽に畜舎の状況を把握することができます。詳しい活用事例については、以下の記事をご覧ください。
畜産業におけるIoTの活用事例は?メリットと将来への可能性
食品業界
ZWILLING社(ツヴィリング)の「Fresh&Save」という容器には、アプリと連携することができるという特徴があり、目安となる期限を通知したり、真空保存によって食品を5倍長持ちさせたりすることができます。詳しい活用事例は以下の記事をご覧ください。
食品業界で業務効率化を実現するIoTの活用事例は?多くの課題解決
スマホ業界
スマホをプラットフォームにしたIoT活用は、ビジネスシーンにおいても積極的に導入されています。一般的なGPS搭載型のスマホを利用して、位置情報管理やドライブレコーダーの管理、アルコールチェッカー、点呼システムなどをスマホで完結できるようにすることで、これまで以上に業務効率化を実現できるというものです。
詳しい活用事例は以下の記事をご覧ください。
スマホをプラットフォームにしたIoT活用のメリットは?事例も紹介
医療業界
「MOVEBAND(ムーヴバンド)」は、睡眠や歩数、消費カロリーなどを常時計測することができるウェアラブル端末です。腕に装着するだけで簡単に計測でき、データはスマートフォンで確認することができます。
運動やダイエットのモチベーション維持につなげることもできるため、高齢者の健康維持といった目的だけでなく、さまざまな世代の健康管理にも役立てることができるアイテムです。
医療業界の詳しいIoT活用事例は、以下の記事をご覧ください。
医療業界におけるIoTの活用事例
鉄道業界
日立とJR東日本は、AI技術を活用して、鉄道設備の復旧対応支援システムを開発・実用化しています。2020年3月から実証実験が行われていましたが、有効性が確認できたことから、2023年4月からは山手線をはじめとした首都圏の一部の在来線で本番運用が開始されました。詳しい活用事例は、以下の記事をご覧ください。
鉄道業界でAI・IoT活用が進む理由と7つの活用事例を紹介
その他
スマートストア
AI導入スマートストアは全国で広がっており、東北ではトライアルカンパニーが、”セルフレジ機能”と”スキャン漏れ防止機能”付き買い物カートを導入したスマートストア、「メガセンタートライアル郡山八山田店」をオープンしました。
スマートストアとは、「リテールAIカメラ」や、セルフレジ機能付きの買い物カート(スマートショッピング、カート)など、トライアルが独自に開発したIoT技術やAI技術を導入した店舗のことです。データをもとに新しい購買体験を提供でき、効率的な運営も可能になります。
詳しい活用事例は以下の記事をご覧ください。
AIとIoTの違いって何?それぞれの定義や関係性を詳しく解説!
インフラ保守
現在、日本の橋やトンネルの多くが老朽化しており、事故を防ぐための点検や補修工事が必要な状態となってきています。そこで、橋桁や橋脚に複数のIoT機器を設置して、その機器で計測した振動データを5G回線で収集・監視し、遠隔から橋の異常を検知する実証実験が開始されました。
これまで、橋梁の点検・補修には多額のコストがかかっていましたが、複数のセンサーによる監視で点検の省力化ができれば大幅にコストダウンできるため、大きな期待が集まっています。
詳しい活用事例は以下の記事をご覧ください。
5G・AI・IoTで広がる可能性とは?特徴・課題・懸念も紹介
IoTサービスの選び方
IoTサービスを導入する際、どのような点に着目して選んでいけば良いのでしょうか。ここからは、IoTさービスの選び方について詳しくみていきましょう。
拡張性の有無
生産設備の増設や稼働拡大などによって、IoTデバイスも増加するというケースは珍しくありません。そのため、デバイスの増加に合わせてIoTプラットフォームも拡張できるかどうかという点は、極めて重要になります。
データをクラウドで一括処理するIoTクラウドプラットフォームであれば、IoTデバイスの増加にも柔軟に対応可能です。1,000を超えるデバイス拡張が行われる場合、エッジでの対応は大きなコストがかかってしまうため、大幅な拡張が見込まれる場合にはクラウドプラットフォームがおすすめといえるでしょう。
接続の安定性と速度
IoTサービスにおいて、データの送受信がスムーズに行えることは非常に大切なポイントです。そのため、ネットワーク接続の安定性は、しっかりとチェックしておく必要があるでしょう。
設備の精度を高めるためには、データ送受信のスピード、タイムラグの少なさも重要になるため、この点に関してはクラウドプラットフォームよりもエッジコンピューティングを導入したIoTエッジプラットフォームのほうがおすすめといえるでしょう。
セキュリティ面
IoTサービスは、インターネットへの接続が前提となります。インターネットへの接続が行われる以上、セキュリティ面での安全性から目を背けてはなりません。IoTプラットフォームに脆弱性があり、サイバー攻撃を受けてしまった場合、情報漏えいが起きるリスクがあります。
そのような事態を避けるためにも、セキュリティ面が万全なIoTプラットフォームを選択することが大切です。
コンサルタントに相談
IoTサービスは、さまざまな分野で積極的に活用され始めています。さまざまな目的活用されていることからも、その将来性の大きさをお分かりいただけたのではないでしょうか。
ただし、IoTにはさまざまな種類のサービスが存在しており、それぞれ特徴が異なるのも事実です。そのため、どのようなサービスが自社にとって最適なのか分からないという人もいらっしゃるかもしれません。
AIsmileyでは、IoTに関するご相談にも専門コンサルタントが無料でお答えしておりますので、IoTサービスの導入に関してお困りの際はお気軽にお問い合わせください。
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