電子帳簿保存法とは、国税関係の帳簿類や証憑書類を電子データで保存することを認めた法律です。2005年3月の改正では「紙媒体の書類をスキャンして保存したもの」も認められるようになりました。現在では以下の3つの方法での保存が可能となっています。
- 電磁的記録 PCで書類の作成を行い、印刷せずにそのままサーバーやDVDなどに保存する方法。
- COM電子計算機出力マイクロフィルム PCで書類を作成し、COM(電子計算機出力マイクロフィルム)に保存する方法。
- スキャナ 紙媒体の書類をスキャンし、データに変換して保存する方法。2015年まではスキャナ保存に「電子署名」が必要だったが、2016年、2018年の改正によって緩和され、現在は電子署名も不要。
2024年1月1日からは、電子取引で発生したファイルの電子保存が義務化されます。今後ますます紙書類を扱う機会は減少し、電子データを扱う機会が増加していくことが予想されるため、できるだけ早いタイミングでAI-OCRや会計ソフトの導入を検討していくことが大切です。
電子帳簿保存法の改正内容
2022年1月の改正電子帳簿保存法では、どのような点が変化したのでしょうか。改正内容について、詳しくみていきましょう。
・税務署長の事前承認制度が廃止
改正前までは、国税関係帳簿・書類で電子データ保存・スキャナ保存を導入する場合、「3ヶ月前まで(原則)」までに税務署長などへ申請を行い、承認される必要がありました。しかし、改正後はこの手続きが不要になります。
この手続きが不要になることのメリットとしては、事務手続きの負担が軽減されることが挙げられるでしょう。これにより、好きなタイミングで電子データ保存、スキャナ保存の導入を行えるようになります。
・システム要件の緩和
国税関係帳簿・書類の電子データ保存を行うためには、その電子データが本物であることを確認できる「真実性の確保」、誰でも明確に視認できる「可視性の確保」という要件を満たす必要がありました。そのため、先ほどご紹介したような電子帳簿保存法の適用条件が細かく定められていました。
しかし、2022年1月以降は、簿記の正規原則に従って記録されており、最低3つの要件を満たしているものであれば、電子データ保存が認められます。その3つの要件は以下の通りです。
- システム概要書、仕様書、操作説明書、事務処理マニュアルなどを備え付ける
- 保存場所に電子計算機、ディスプレイ、プリンター、プログラムおよびマニュアルが備え付けられており、明瞭な状態で速やかに出力できる
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件によって検索できる
・スキャナ保存のタイムスタンプ要件の緩和
これまで、スキャナ保存を行う場合には「受領者の自署」と「3営業日以内でのタイムスタンプ付与」が必要とされていました。しかし、2022年1月以降は「自署が不要」となり、「最長約2ヶ月と概ね7営業日以内にタイムスタンプ付与」を行えば良いことになります。
・検索要件の緩和
これまで、国税関係帳簿・書類を電子データ保存したり、スキャナ保存したりする場合には、帳簿の種類に応じた主要な記載項目により検索できることが要件として定められていました。しかし、2022年1月以降は「日付」「取引金額」「取引先」という3項目のみという要件に緩和されます。
・電子取引における電子データ保存の義務化
これまでは、データで受け取った請求書などの国税関係書類を紙で保存することが認められていましたが、2022年1月以降はすべての企業においてデータで受け取った書類の出力保存が「原則不可」となります。
電子取引は、データで受け取るすべての方法が該当します。そのため、EDI取引やクラウドサーバ経由はもちろん、PDFで請求書をメール送付する場合、Web請求書発行システムを利用する場合も該当します。
電子帳簿保存法にAI-OCRを活用
電子帳簿保存法に対応したAI-OCRを活用することで、効率的に電子データを保存できるようになります。より正確かつ効率的に電子データを保存するためには、電子帳簿保存法やインボイス制度について正しく理解した上で、適切なサービスを活用していくことが大切です。
近年は、AI-OCRの活用によって各社各様のフォーマットで記載されている文字情報を自動で読み取り、大量の書類を効率的にデータ化することによって、業務負担を軽減するというニーズも高まってきています。
AI-OCRを活用すれば、取引先から送られてくる請求書の文字情報をもとに、「インボイス登録番号」「取引先名」「日付」「金額」といった情報を自動で識別してくれるため、担当者の負担を増やすことなく効率的にデータ入力を行うことができるのです。
電子帳簿保存法に対応することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。また、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか。メリット・デメリットを詳しくみていきましょう。
電子帳簿保存法に対応するメリット
電子帳簿保存法に対応するメリットとしては、以下のような点が挙げられるでしょう。
・業務効率化
これまで紙ベースで保管していたレシート等の領収書をすべて電子化することによって、書類管理の負担が軽減されるため、従業員の業務効率化につなげられます。書類のファイリングや封入、封緘、そして書類検索の手間が大幅に減るため、より効率的に書類を扱えるようになるのです。
また、電子データを保存できるシステムと経費精算システムを連携させれば、自宅や外出先などからも作業できるようになるというメリットがあります。
・リスクの軽減
紙でさまざまな書類を保存する場合、紛失や破損のリスクを伴います。その点、すべての書類を電子化すれば、火事や水害といった予期せぬ災害で消失してしまう心配もありません。
・コスト軽減
紙ベースの書類を発行・保存するためには、印紙代や印刷代、インク代、保管用ファイル代といったさまざまなコストが発生します。また、契約書を取り交わす際にも、収入印紙代を支払わなければなりません。その点、書類を電子化すればこれらのコストをすべて削減することができます。
電子帳簿保存法に対応するデメリット
一方、電子帳簿保存法に対応するデメリットとしては、以下のような点が挙げられるでしょう。
・導入コストが発生する
書類の電子化を図る場合、ソフトやスキャナーなどを導入しなくてはなりません。その導入コストが発生する点は、一つのデメリットといえるでしょう。ただし、長期的に見れば導入コストよりも「紙ベースでの保管にかかるコスト」のほうが大きくなる可能性が高いため、一概にデメリットとは限りません。
・電子データ化する手間がかかる
大量の書類を電子データ化する場合、時間がかかってしまう点も一つのデメリットといえるでしょう。ただし、手間がかかるからという理由で紙書類を保管していると、保管場所がどんどん圧迫されてしまいます。
そのため、電子化にかかる手間や業務効率といった点を加味しながら、電子データ化を検討していくと良いでしょう。
では、実際に電子帳簿保存法対応ソフトを導入する場合、どのようなポイントを着目して選んでいけば良いのでしょうか。ここからは、電子帳簿保存法対応ソフトの選定ポイントをいくつかご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
扱うデータが対応しているか
電子帳簿保存法対応ソフトは、その大半がPDF形式に対応していますが、企業によってはPDF以外の文書を取り扱うケースもあるでしょう。電子帳簿として保存するファイル形式としては、ExcelやWord、JPG、PPTなどさまざまなものが存在します。
これらの形式の文書をPDFに変換することは決して難しくありませんが、より効率的にファイル変換を行いたい場合には、頻繁に使用するファイル形式に対応した電子帳簿保存法対応ソフトを選択すると良いでしょう。
国税書類の管理は適切か
国税関係書類は、請求書や契約書、納品書、見積書など、さまざまなものが存在します。そのため、自社で電子化する書類がどのようなものなのかによって、選ぶ製品も大きく変化するでしょう。
たとえば、請求書だけを電子化したい企業が、すべての国税関係書類に対応しているソフトを導入しても、そのソフトの機能を使いきれずにコストばかりが膨らんでしまう可能性があります。そのため、自社にとって必要な機能を明確化した上で、選定していくことが大切です。
データの処理速度に問題はないか
電子書類の処理業務は、多くの企業において毎日のように発生する業務の一つです。取引先が多い企業ほど、発生する書類も多くなっていくため、よりスムーズに業務を進行させるためにも処理スピードは極めて重要なポイントになります。
そのため、読み取りや処理に時間がかかるソフトを導入してしまうと、読み取り中に業務が止まってしまい大きなストレスを抱えることになるわけです。そのようなトラブルを避けるためにも、データの処理速度に問題はないかチェックしておくことをおすすめします。
システム連携が可能か
企業によっては、すでに請求書や領収書発行システムを導入しているというケースもあるでしょう。そのような企業の場合は、既存のシステムと連携できるかを確認することが大切です。
既存のシステムから直接帳票を取り込んで、タイムスタンプ付与などの要件を満たすことができるソフトであれば、より効率的に電子帳簿の保存を行えるようになります。
また、経理システム、勤怠管理、経費管理アプリなどと連携できるタイプのソフトであれば、稟議や申請・承認ワークフローを構築していくことも可能になるため、さらなる業務効率化が実現できるでしょう。
十分なセキュリティ対策がされているか
国税関係書類を扱う場合、企業の取引状況などの機密情報が記載されているため、特に注意を払わなくてはなりません。電子帳票保存法対応ソフトの導入によって業務効率化を実現できても、十分なセキュリティ対策が行われていなければ情報漏洩などの大きなトラブルにつながってしまいます。
自社の情報を守るためにも、より高度なセキュリティ対策が行われているシステムを選択することが大切です。
数ある電子帳簿保存法対応ソフトウェアの中から、自社の課題や導入の目的あった電子帳簿保存法対応ソフトウェアを選び出すのは容易ではありません。そんな時に役立つのが、目的別にセグメントされた電子帳簿保存法対応ソフトウェアカオスマップです。
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