異常検知AI・予知保全AI検討時に知っておきたいこと
損害が大きくなる前に検知し、問題に対処できる
異常検知AI・予知保全AIは、人では検知することが難しいような細かい異常も検知するため、損害が生じる前あるいはまだ損害が小さい内に問題へ対処できます。
たとえば、機械の部品故障につながる不具合が発生していたと仮定します。このとき部品の異常が検知できていれば、機械が故障する前に部品交換ができます。機械が故障してから修理した場合は、原因を探すためのダウンタイムが必要となるのに加え部品交換よりも多大な費用がかかります。
このような場面でも、異常検知AI・予知保全AIで早めに異常を検知しておけば、損害の拡大を抑えられるでしょう。
メンテナンスを自動化できる
これまで人が行っていたメンテナンス検査を自動化できます。前述の通り故障前に部品取り替えなどが可能になることに加え、定期交換などでまだ使える部品交換の無駄も省けます。
検査の精度に関しても、日々データを収集し学習するAIであれば熟練の技術者と遜色のないレベルで判断ができると期待されています。
人件費や人材不足を解消する
人の判断に頼っていた異常検知をAIに切り替えることで、「検査業務にかける人件費削減」や「検査経験者の人材不足解消」ができます。
異常検知AI・予知保全AIの予備知識
異常検知AI・予知保全AIは、人間の目では識別が難しい些細な変化も捉えられるため、最近ではさまざまな領域で導入され始めています。その中でも製造業は、異常検知AI・予知保全AIの導入が進んでおり、製品の品質管理やリスクマネジメントなど、さまざまな形で活用されているのです。
異常検知の手法
異常検知の主な手法としては、以下のようなものが挙げられます。
・外れ値検知
外れ値検知とは、検出単位がデータ点の検知方法となって、普段とは異なるデータ点を検知する場合に活用される手法のことです。その一例としては、株価指数などにおける外れ値検索が挙げられるでしょう。急激な株価指数の値上がり・下落を自動で検知し、アラートを発生させることが可能です。
・異常部位検出
異常部位検出は、検出単位が部分時系列の検知方法であり、明らかな異常が発生している部分時系列を検出するときに活用される手法です。そんな異常部位検出の一例としては、心拍数のデータからの異常部位検出が挙げられるでしょう。急激な心拍数の変動部分だけを抜きだしたい場合などに有効です。
・変化点検知
変化点検知は、時系列データのパターンが急激に変化する部分を検知する際に用いられる手法です。そんな変化点検知の一例としては、特定のワードにおける検索数の変化が挙げられるでしょう。特定のワードの検索数推移を調べると、ある時期を境に異常に多くなるというケースがあります。このような場合において、「異常に検索が増加した時期」を検知できるのが変化点検知という手法です。
異常検知AI・予知保全AI導入によるメリット・デメリット
異常検知AI・予知保全AIを導入した場合、どのようなメリットが得られるのでしょうか。また、どのようなデメリットが生じる可能性があるのでしょうか。メリット・デメリットをそれぞれ詳しくみていきましょう。
異常検知AI・予知保全AI導入によるメリット
異常検知AI・予知保全AI導入によるメリットとしては、主に以下のような点が挙げられます。
・業務効率が向上
大きなメリットの一つとして挙げられるのが、業務効率の向上です。異常検知システムを活用することで、人間が目視で実施していた作業を自動化できるようになるため、大幅に業務効率を高められます。
・人的ミスを防止
異常検知AI・予知保全AIを導入することで、人的ミスを防止できるようになる点も、大きなメリットの一つです。手作業で検査作業を行うと、従業員の経験値やコンディションなどによって、品質にばらつきが生まれてしまうことがあります。その点、AIを活用すれば常に一定の品質を維持することが可能です。
・コスト削減
これまでは、異常検知や予知保全を人の手で行うのが一般的でした。つまり、異常検知や予知保全の品質を維持するためには人的コストを投じる必要があったわけです。その点、AIを導入すれば、人の手で行われていた作業の多くを自動化できるようになり、コスト削減につなげられます。
・属人化を防止
人間の手で行われる作業は、作業者の経験値や知識などが蓄積されていきます。そのため、若手とベテランの間に作業レベルの差が生じてしまうケースも少なくありません。その点、AIを導入すればベテラン作業員の経験を学習させていくことが可能になるため、俗人化防止につながります。
異常検知AI・予知保全AI導入によるデメリット
一方、異常検知AI・予知保全AI導入によるデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
・検出できるものは限られている
高い精度で異常検知や予知保全を行えるのがAIの魅力ですが、どんなものも検出できるというわけではありません。たとえば、短い時間で大量の検査を行う場合には、その処理量に合ったマシンスペックが必要になります。
また、向きや方向が一定でないものも、AIが正しい判断を行えるように向きを揃える作業が必要です。さらに、透明・半透明なものは、透過や反射によってカメラの撮影に影響を及ぼしてしまうケースが多くなるため、カメラ位置や光の当たり具合の調節が欠かせません。
このように、すべてのものが簡単に検出できるわけではなく、ひと手間を加える必要があるケースも多いので、事前にAIが得意とする領域を把握しておくことが重要になるでしょう。
・膨大な学習データを準備する必要がある
AIは、蓄積されたデータをもとに分析や予測を行う仕組みです。そのため、膨大な学習データを準備しなければ、高い精度での異常検知・予知保全を実現することはできません。
より多くのデータを準備するためには当然時間がかかるため、導入時の負担が大きくなるというデメリットが生まれます。とはいえ、学習データを準備することができれば、高い精度での異常検知・予知保全を実現できるようになるため、デメリット以上のメリットが生じるという考え方で問題ないでしょう。
異常検知AI・予知保全AIの導入手順
異常検知AI・予知保全AIを導入する際に確認しておきたいことをご説明します。
1.必要データの収集
先ほどもご紹介したように、精度の高い異常検知AI・予知保全AIを導入するためには、まず大量のデータを準備しなければなりません。ただし、ここで重要になるのは「正しいデータ」を大量に収集する必要があるということです。
ただデータを大量に集めれば良いというわけではなく、これまで培ってきたベテランの検知者の経験値が必要になります。こういった「正しいデータ」を人の手で仕分けなければ、AIに学習させることもできません。
そのため、最初は必要なデータを取得してデータの有効性を検証していく「教師なし学習」によって異常検知を行い、一定のデータが蓄積されたら教師あり学習に切り替えていくという方法も有効といえます。
2.センサーを選定する
異常検知・予知保全において、センサーは「データを集める」「異常を検知する」という役割を持ちます。センサーが検知した温度・音響といった異常が数値化されることで、異常をスピーディーに検知できるようになるわけです。このスピーディーな検知を実現するためにも、センサーは欠かせません。
3.学習用データセットの作成
センサーの選定が終了したら、次は数値化されたデータを用いて学習用データセットを作成していきます。センサーによって収集・数値化されたデータは、データの自動抽出や学習に見合ったデータに変換しなければなりません。
これは用途によって違いがあるものですが、故障予測などにおける正常・異常の線引きは極めて重要になります。学習用データセットに曖昧さが残ると、AIによる異常検知の精度も低くなってしまうため注意しましょう。
4.AIによる学習
AIによる学習にはいくつかの種類が存在します。そのため、最適な学習方法を見極めていくことが大切です。場合によっては、複数の学習手法を組み合わせてAIにデータを学習させていくこともあります。
学習結果の評価や再学習といった点も含めて、適切な手段で学習を進めていきましょう。
5.運用開始
ここまでの手順を終えたら、いよいよ運用を開始します。現在は、より高い技術を搭載したセンサーも多くなってきているため、AIによる異常検知の活用シーンは広がっている状況です。
ただし、AIは稼働開始がゴール地点ではなく、定期的なメンテナンスによって再学習を行い、精度を高めていくことも重要になります。ここがゴールとは考えずに、より高い精度を実現するための環境整備を行っていきましょう。
異常検知AI・予知保全AIの選び方
自社の目的に合う最適な異常検知AI・予知保全AIを選ぶための3つの基本ステップをご紹介します。
1.取得できるデータを明確にする
異常検知AI・予知保全AIの導入を検討している環境において、「どのような特徴のデータを、どの程度の量取得できるか」を明確にしましょう。
2.適切なAIの選び方
取得できるデータと目的に応じて適切なAIを選びます。AIを選ぶ際は専門的な知識が必要となるため、自社に人材がいない場合は外部のベンダーに相談することをおすすめします。
また、AIモデルの作成はこれまでAI専門エンジニアにより行われることが一般的でしたが、その場合多大な工数がかかることが問題視されていました。しかし近年、異常検知AIの分野では時系列データ解析技術が新たに開発されました。
この技術を用いることで、検知対象の膨大な情報が絡み合う時系列データの中から異常検知に必要な情報を自動抽出し、異常検知のAIモデルを自動で作成できます。そのためAI専門エンジニアだけでなく一般のエンジニアでもAIモデル作成ができることに加え、工数も大幅に削減できます。
導入するAIの機能選定の際は、有識者を交えて各AIの特徴やコストバランスを検討すると良いでしょう。
3.ユーザーの使いやすさ
導入後にAIを運用していくのは現場の人員です。そのため、実際に現場でAIを利用する人にとっての「使いやすさ」や「わかりやすさ」についても検討しましょう。
製造業向けAIソリューション事例ガイド
アイスマイリーでは、製造業向けのAIソリューション導入事例をまとめた「製造業向けAIソリューション事例ガイド」を無料で配布しています。本資料では、工場での外観検査や検品・故障・劣化など、あらゆる事象の事例をAI企業6社が紹介します。
導入を検討される際には、ぜひこちらの「製造業向けAIソリューション事例ガイド」をご活用ください。
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異常検知AIカオスマップ
数ある「異常検知AI」の中から、自社の課題や導入の目的にあった「異常検知AI」を選び出すのは容易ではありません。そんな時に役立つのが、導入の目的別にセグメントされた異常検知AIカオスマップです。
上記をご覧いただくと分かるように、異常検知AIは大きく分けて6つにセグメントできます。この便利なカオスマップは、以下の「異常検知AIカオスマップを無料でダウンロードする」ボタンより無料でダウンロードできます。
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異常検知AI・予知保全AI導入後の運用のコツ
異常検知AI・予知保全AIにはさまざまなメリット・デメリットがあることや、AIを導入する際の手順など、お分かりいただけたのではないでしょうか。
先ほどもご紹介したように、異常検知AI・予知保全AIは導入がゴールではありません。導入後、精度を高めていくためのモニタリングを怠ると、導入効果を得られなくなってしまう可能性があります。そのため、定期的に精度をモニタリングして、AIの誤判断がある場合はその分野に力を入れて学習させることが大切です。
また、精度に問題がない場合でもシステムのタイムラグや経年変化を考慮し、定期的にメンテナンスを行うと良いでしょう。