需要予測+生産計画最適化AI
需要予測+
生産計画最適化AI
国分グループ本社株式会社サプライチェーン統括部 イノベーション推進部 イノベーション推進課長 目加田 雄亮 氏
目加田氏:この構想をスタートした当時は2019年。国分グループでは5年に1度長期経営計画を立案していて、その策定に私の部署が関わっていました。経営戦略の中においてもデジタル化が非常に重要であり、特に卸売を手掛ける私たちにとって「需要予測の高度化」が非常に重要なテーマでした。当時は、その中で推進実現に向けての検討をしていました。そんな時に偶然DATAFLUCTさんと出会ったんですよね。
石田:たまたま弊社代表の久米村がピッチイベントに登壇しているときに、ご一緒させていただいたのが最初の縁。ちょうどそのときDATAFLUCTでは惣菜の食品廃棄ロスについてのプロジェクトを行なっていたこともあり、いつか一緒にできたらいいですね、という話になりました。その後、機械学習を用いて何ができるのか、需要予測を行うことについてのメリットや可能性についてということなどをお話させていただきましたね。
株式会社DATAFLUCT プロダクト事業本部 石田 和也
目加田氏:何年か前に一度、私たちの中でもAIを活用した「需要予測」に関しては取り組んでみたことがあるのですが、なかなか結果がついてこなかったという経験がありました。数百から数千種類の商品の販売予測を行う場合、作業工数は膨大になる上に、全商品の精緻な予測は困難を極めてしまいます。また、需要予測のシステムを導入している場合でも、既存システムでは古典的な統計による需要予測となるため、天候データといったようなリアルタイムの外部データを活用できず、最新の機械学習アルゴリズムの導入に至らなかったのです。
ですので、いざ新たに実証実験をはじめる際は数社にお声がけしてじっくりとお話を聞くところからスタートしました。その中でDATAFLUCTさんは、卸売業界が他業界とくらべて非常にトラディショナルな特徴を持っていることを踏まえてくださった上でのパッケージ化しない個社に合わせた柔軟なアイデアや、スタートアップならではのスピード感とコスト感、そしてなにより技術力の高さと知見に魅力を感じて、一緒に取り組ませていただくことを決めました。
石田:PoCをスタートするにあたっては、まず最初に課題を再度細かくヒアリングしながらどのようなモデルをつくろうか、週に一度のミーティングを重ねながら進行していきましたね。卸売の業務を正しく理解することにもだいぶ時間を費やしました。
国分グループ本社株式会社サプライチェーン統括部
デジタル推進部デジタル推進課兼情報システム部 物流システム二課 主席 小沼 諭 氏
小沼氏:これまでに社内でも「機械学習ライブラリ」を使って、気温や曜日などをセグメントしてシンプルなモデルをつくったことはあったので、高度化したときにいいものが出来上がるのではという期待感は最初からありました。それまでの社内のノウハウを生かしたい思いもあり、PoCの初期段階で弊社からもシンプルなアルゴリズムを中心に3つ候補を出し、DATAFLUCT社からは高度なアルゴリズムを中心に複数提示頂き、活発なディスカッションを繰り返しながら試行錯誤していったのですが、いちばんの課題だったのは「過学習」でした。
使えるデータが限られているので、あまり複雑なモデルや特徴量を増やしてしまうと既知の過去のデータや手元にある学習データは適合するけれども、まだ見ぬ未来のデータに当てはめて予測しようとすると、逆に精度が下がりすぎてしまったりしたのです。加えて特徴量を少なくしすぎると学習予測の特徴を捉えきれなくなったりして、毎週いろんなパターンを試していましたね。この期間内にできることは一通りやり切ったんじゃないでしょうか。
石田:DATAFLUCTが提供する「Perswell」は、弊社のデータサイエンティストがモデル構築を行い、需要予測の自動化をトータルでサポートする点が特徴です。国分グループ様ではこのような課題を抱えていたので、最初から絶対にこのモデルがいい、とは言い切ることができず、アルゴリズムは7つほどご提案させていただきました。もともとPoCの期間は4ヶ月だったのですが、検証にまだ必要だということで2ヶ月費やしました。卸売は通常の販売による「定番」だけではなく、「特売」や「新商品」などアプローチそのものを変えないといけません。その後の本番開発に進むためにはその辺りの要件定義も必要でした。
モデルが増えれば増えるほど運用も大変になるので、世間一般では汎用的なモデルを作るのが当たり前だ、という常識があったのですが、そもそも膨大な商品アイテムが存在する卸売においては、商品ごとに特化したモデルじゃないと精度改善が見出せないというところに結論が辿り着きました。「普通はそんなことしないよ」というような商品ごとのモデルをつくろうと決めたのが大きな転換点だったように思います。検証は何度も繰り返したので、6ヶ月が経つ頃にはこのまま進んでいけばいけるぞ、という手応えをだいぶ掴める状態になってきました。
小沼氏:一般的には1回学習したらしばらくは学習済みのモデルでしばらく予測を続けて、一定期間が経過したら再学習、というのが今のAIの活用法ではあると思います。
しかし今回は商品ごとに、かつ毎日学習するという従来の常識とまったく反対のことを実行することにこだわりました。というのが、卸売はさまざまな要因で一日ごとに状況が大きく変わります。新しい情報はデイリーで最大限取り込まないと精度の高い予測の実現には至らない、また現場感覚からもズレてしまうのです。商品ごとにモデルをつくり、毎日機械学習を実行して、最新のモデルで予測する。このこだわりこそが、唯一無二の需要予測モデルを生み出した背景になります。
株式会社DATAFLUCT プロダクト事業本部 鈴木 剣之介
鈴木:「毎日、再学習する」というのはこれまでにやったことがなかったので、そのハードルを乗り越えるためにいちばん重要だったのが、「非構造化データの構造化」でデータを資産化するDATAFLUCTのサービスである「AirLake(エアーレイク)」の活用です。国分グループ様の社内データだけでなく、様々な種類のデータを収集・統合し、BIのような外部システムへ簡単に連携できるため、今回のような従来とは違うデータを最大限に活用した分析・機械学習を可能としたのです。
また実際に「毎日、再学習する」というのは、非常に難易度が高かったものの、卸売業の運用の上ではとても有効でした。ハードな運用をするとどうしても障害が起こりやすい構造になるのですが、毎日学習していることで何か不具合があったとしても、精度としては少し落ちるものの、最小限の傷で済みました。
髙橋氏:単なるPoCではなく、本番運用を大前提としたシステムを構築していたので、経営会議で発表したときにも後押しをいただきました。実装に向けての意思決定もスムーズに進みました。全商品ではないですが、まずは特定の商品に絞り、現在では運用をスタートしています。実際に現場で業務をやっているメンバーからは違和感なく業務が進められていて、かつ今までなかった気温の変化に対して明確に反応しているということを感じているという嬉しい声が聞こえてきています。
国分グループ本社株式会社サプライチェーン統括部デジタル推進部デジタル推進課 主任補 髙橋 正太郎 氏
石田:実際に長期運用していく中で、リリース当初にはわかっていなかった課題が発生してきたりしているのでその蓄積によって改善策が生まれ、更なる有益なサービスに進化すると信じています。スモールスタートからはじまったものの、今後は国分グループ様の全国で最大延べ50万商品ほどある「定番」商品の需要予測に耐えうる運用、システム、クラウドを作り込んで運用を回していかないと思っています。プレッシャーは大きいですが、それ以上にやりがいの方がいまは勝っています。
目加田氏:まだまだプロジェクトははじまったばかりではありますが、このサービスの進化も私たちは描いています。たとえばメーカー様の各倉庫の在庫と、国分グループの在庫を見える化することで、サプライチェーン全体の最適化と効率化を実現し、食品ロスの問題も業界全体で取り組めるようになるかもしれない。まだまだ漠然としていますが、そんな大きな目標も生まれてきました。業界をリードするようなサービスになるように、一つひとつ目の前にある課題を乗り越え、対応する商品数を増やし、精度を磨き上げていきたいと思います。難しい壁が目の前にありますが、乗り越えていきたいですね。
国分グループ本社株式会社 様が導入したサービス
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