ノーコードでAIやIoTをより身近に「Gravio(グラヴィオ)」| AIポータルメディア「AIsmiley」

2022.10.13 / 更新日:2022.10.17

ノーコードでカジュアルに業務を自動化できるGravioが目指す世界 アステリア開発者インタビュー

近年、IT人材の不足やDX化の遅れといった日本企業の課題を解決するためのキーワードとして、「ノーコード開発プラットフォーム」が注目されています。コードを書かずに、プログラムできるのが特徴で、プログラマーだけでなく、業務の現場にいる人たちもシステムを構築することができます。

そんな「ノーコード」をなんと20年も前から提唱し、ノーコード製品を提供し続けているのが、アステリア株式会社です。

アステリアが目指すのは「つながり」による社会価値創造の変革です。異なるシステムの企業データをノーコードで連携する「ASTERIA Warp(アステリア ワープ)」をリリースし、現在、15年連続で市場シェア1位(EAI/ESB市場の出荷数量ベース)を達成しており、圧倒的な支持を得ています。

他にも、コンテンツ管理アプリ「Handbook(ハンドブック)」やノーコードで業務アプリを作成できる「Platio(プラティオ)」、そしてAI搭載IoT統合エッジコンピューティングプラットフォームGravio(グラヴィオ)」といった製品を手がけています。

Gravioはネットワークカメラの画像やIoTセンサーからのデータをエッジで処理するプラットフォームで、2022年7月25日、大型バージョンアップとエッジゲートウェイの新モデル「Gravio Hub 2」をリリースして話題になりました。

今回は、このGravioが誕生したときのストーリーや製品にこめた思い、アステリアが描いている未来について、アステリア株式会社 取締役副社長/CTO 北原淑行氏と、アステリア株式会社 執行役員 研究開発本部 本部長 田村健氏にインタビューしました。

アステリア株式会社 取締役副社長/CTO 北原 淑行氏

北原 淑行(きたはら よしゆき)

長野県生まれ。青山学院大学卒業。学生時代よりソフトウェア開発を行う。1988年より日本デジタルイクイップメント株式会社(現:日本 HP)にてミッションクリティカルなシステム開発に従事。1990年よりキヤノン株式会社にてNeXT Operating Systemの日本語化プロジェクトに参画。1991年より、ロータス株式会社(現:日本IBM)にて、ビジネス・アプリケーションの製品開発をリード。1998年、平野洋一郎氏とともにインフォテリア(現:アステリア)株式会社を創業。

アステリア株式会社 執行役員 研究開発本部 本部長 田村 健氏

田村 健(たむら けん)

東京工業大学卒業。1993年より、日本電気株式会社(NEC)でグループウェアやワークフローシステム、統計解析システムなどの開発に携わる。2000年、アステリアに入社し、主力製品である企業向けのデータ連携ミドルウェア「Asteria(現:ASTERIA Warp)」の初期バージョンから開発に携わる。

20年前から一貫して「ノーコード」にこだわる理由とは?

──アステリアは1998年に創業(当時の社名はインフォテリア)してから、さまざまな製品をリリースしていますが、一貫して「つながる」というキーワードがあると思います。製品を開発する際に重視していることを教えてください。

北原氏:この20年間ずっと、「ノーコード」ということを重視しています。創業当初はライブラリー系の製品を作っていたので、UI(ユーザーインターフェイス)がなくコンソールで動く目立たないものでした。しかし、結果が目に見えるようなものでないと、ユーザーさんが製品の動作を理解しにくいことがわかりました。

そこで、アイコンをつなぐだけでプログラムの動作を記述するという製品を開発しました。ノーコードの仕組みは、プログラムをする人にとっては簡単に書けるというメリットがありますし、その上、誰が見てもそのプログラムが何をしているのかが理解できます。もちろん、ユーザーにとって使いやすいというのも大きなメリットです。そのため、ずっとアイコンプログラミングにこだわって作っています。

田村氏:当時も、グラフィカルなUIでフローを作る製品はあったんですが、ほとんどはソースコードを出力していました。今でいう「ローコード」ですね。2002年にリリースした「ASTERIA Warp」(最初の名称は「ASTERIA R2」)は本当にノーコードで、1行もコードを書かず、エンジンがそのまま読み込んで動かすので、後でコンパイルなどをする必要はありません。そういう意味では、リリース当時から類を見ない製品でした。

「ASTERIA Warp」20周年記念サイトより

──ローコードでも、高速開発というメリットは得られると思いますが、ノーコードにこだわった理由は何でしょうか?

北原氏:ローコードで開発すると、最終的にプログラムをいじってしまう可能性があります。手を入れてしまうと、不可逆になってしまい、GUI(グラフィカルユーザインターフェース)開発に戻れなくなってしまうのです。基本的にアステリアの製品では、出力したものでも、再度読み込んでプログラムを変更できるようにしています。

たとえば、文字と文字を結合させるというシンプルな処理すらもアイコンで行っています。アイコンで処理するほうが手間がかかる場合もありますし、少し処理が重くなってしまうことも確かです。最初は本当にそこまでやる意味があるのか、という議論はありましたが、徹底することでビジョンがクリアになり、1から10までノーコードでプログラミングできる世界を実現できたと思っています。

そのおかげで、開発に携わる社内SEやパートナーさんをはじめ、実際に利用するエンドユーザー、サポートする私たちなど、みんなが同じ意識でプログラムを見ることができます。プログラムを可視化することで、誰にとってもわかりやすくなる世界を目指しているんです。

田村氏:僕はASTERIA Warpの最初のバージョンができた頃にアステリアに入社しました。当時は若かったので、ビジョンを理解できていなかった部分があり、「本当にノーコードって必要なのかな」と半信半疑でした。でも、一緒に製品を作る中で、「ノーコードだからこそ簡単にプログラムを書ける」ということの価値を体感して、今ではローコードでコードを出力するという考えはなくなりました。やっぱりソースコードを書いてビルドして、デプロイするのは手間がかかりますから、そこをアイコンだけで作れるのがアステリアの強みだと思ってます。

──ノーコードで簡単に開発できるのがメリットというのは納得ですが、ノーコードのままメンテナンスできるようにするというメリットは何でしょうか?

北原氏:ソフトウェアは作る時間よりも、使っている時間のほうが圧倒的に長くなります。長く使っていればメンテナンスする必要もありますし、いろいろなことをやりたくなります。そんなとき、ノーコードでプログラミングできれば、気軽に現状に合わせて細かな修正を追加したり、新機能を実装でき、ソフトウェアの寿命を延ばすことにもつながります。

アステリアの製品はすべて、「できるだけ長期間、使ってほしい」という思いで作っています。ノーコードによって製品の寿命を延ばすことができれば、お客様も私たちも、両者にとって大きなメリットになります。

環境データの「見える化」が生産性の向上に直結する

──AI/IoT統合型エッジコンピューティングプラットフォーム「Gravio」について伺います。Gravioはさまざまなセンサーをエッジで処理するプラットフォームであり、しかも手頃な価格で提供するという驚きのソリューションですが、どのような経緯で生まれたのでしょうか?

北原氏:ASTERIA Warpはクラウド上のソフトウェアをつなげていますが、次のステップとして、IoTの世界が来ると考えました。それで、さまざまなIoTセンサーをつなごうと思ったんですが、一筋縄ではいきませんでした。簡単に入手できて簡単につなげるようなツールがなかったんです。

温度、湿度、距離、人感など、センサーはいろいろあるんですが、それらのハードウェアとクラウドの間をつなぐものがありませんでした。そこで、それらをつなぐプラットフォームとしてGravioを開発することにしました。

──なぜリアルな世界をクラウドとつなげようと考えたのですか?

北原氏:たとえば、工場のように広い空間の温度を計測する場合、正確に計測しようとすると、センサーを各所にたくさん設置する必要があり、機器やメンテナンスのコストが上がってしまいます。そのコストを小さくできれば、みなさんに使ってもらえるようになると考えました。

正確な環境情報を取得することで、きめ細かい管理ができるようになります。たとえば、高齢者は温度感覚が鈍くなり、若い人と比べると5度くらい体感温度がずれる場合もある、と言われています。そのため、正確な室温を計測することで、熱中症などを防ぐことができます。

また、計測したデータは記録して管理するわけですが、やはり簡単に効率よく管理するなら、クラウドにつなげる必要があります。

田村氏:数年前の導入事例ですが、海苔製品の工場でGravioを導入していただきました。海苔は湿気に弱く、少しでも湿気があると裁断機に海苔が付着して詰まってしまい、機械を止めて洗浄するなどのメンテナンスに手間がかかるという課題がありました。

そこでGravioを導入して、裁断機付近の温度・湿度のデータをリアルタイムで見える化し、異常があればすぐにアラート通知が届くシステムを構築しました。loTソリューションを通じたデータ管理を徹底することで、季節や天候に左右されない安定した生産を実現できます。

Gravioでは温度・湿度・大気圧センサーやドア・窓開閉センサー、人感センサーだけでなく、振動センサーやワイヤレススイッチ、CO2センサー、距離センターなど、各種センサーを用意し、さまざまなセンシングができます。

PoC疲れを防ぐ!Gravioなら気軽に試せるのがメリット

──「Gravio」を何でもつながるプラットフォームにしたのはなぜですか?

田村氏:PoC(概念実証)の段階で、ちょっと違う切り口で試したくなることがあります。たとえば、トイレの個室の利用状態を確認するため、扉の開閉センサーでテストをしたけれど、やはり人感センサーで試してみたい、といった場合です。そうすると、また同じくらいのコストが追加で発生します。これは、近年課題になっている「PoC疲れ」の原因の1つでもあります。

PoCなのに、また同じコストをかけて試すとなると、やっぱり経営者はROI(投資利益率)を気にします。そこを簡単にできるようなプラットフォームを提供する必要があると、私たちは考えています。

北原氏:IoTやAIを1つの目的に特化して作ってしまうと、そこから抜けられなくなります。他のことをする場合には、また投資しなければなりません。これではカジュアルに試すことができなくなります。

特にセンサーは毎年、新製品が出ています。テクノロジーはどんどん進化しているのに、一度導入したハードウェアが陳腐化してしまうような状態はよくないと思います。投資効率をよくするためには、違うやり方をカジュアルに試せる環境が必要で、新製品が出たらすぐに最新テクノロジーの恩恵を受けられるようにするのが理想的です。ですからGravioは、それが容易に実現できるようなプラットフォームとして開発しています。

これまでは3m四方しかセンシングできなかったところが、新製品は5m四方を見られるというのであれば、置き換えることでコストダウンになる可能性があります。テクノロジーはどんどん変化するので、ハードウェアとソフトウェアを協調させることが重要だと考えています。

──「Gravio」を導入したケースで印象に残っている事例はありますか?

北原氏:イギリス・ロンドンにあるチーズ販売店にGravioを導入していただきました。チーズも海苔同様、適切な温度・湿度の管理が大切で、それができないと品質が劣化してしまいます。そのロンドンのお店には、チーズを並べた冷蔵ショーケースがいくつかあり、従来は店員さんが1日3回、手作業で温度を測り、紙に書いて管理していたんですが、店員さんが2人しかいないので、いそがしくなってくると手が回らないという課題がありました。

そこでGravioを導入して、ショーケース内に設置した温度・湿度センサーのデータを管理するシステムを作ったんです。もし温度・湿度が基準値より振れたら、Bluetoothスピーカーから「モォ〜」と牛の鳴き声を流して知らせるようにしました。温度・湿度の記録もできますし、作業の省力化を実現できました。

田村氏:スポーツシューズのメーカーさんでもご活用いただいています。アスリートのためにカスタムでシューズを製造する部門で、靴底を高熱で圧着する工程があるんですが、機器の温度表示と実際の靴近辺の温度に差があるのではと考えたそうです。それまでは手作業で温度を測っていたんですが、温度センサーと「Gravio」のシステムによって、1日の温度変化を記録して見える化したところ、やはり温度が想定と違っていたことがわかり、調整することで品質の向上につながったそうです。

業務の遠隔化・自動化をカジュアルに実現できるGravio

2022年7月25日リリースの新モデル「Gravio Hub 2」

──今後のGravioはどう展開して行く予定ですか? また、この先にはどんな世界を見据えているのでしょうか?

田村氏:多くの会社では、「業務の課題に気がつく人」と、「プログラムを作れる人」は違います。気づく人は実装できないし、実装できる人は現場の課題に気づきません。そのギャップをできる限り埋めるために、さらにノーコードで誰でも課題解決の仕組みを作れるようにしたいです。そして、もっと人間の五感に近づけたアクチュエーション(センシングしたデータをもとに実際に動作する装置)を実現し、アナログとデジタルをつなぐところまで踏み込んでいけるといいなと思っています。

北原氏:Gravioは各種センサーで取得したデータにもとづいて、さまざまなシステムとの接続を簡単に実現できます。私たちは「接続性の高さ」をさらに拡張していきます。当然、データの「入り口」となるセンサーの対応拡充も重要ですので、さまざまなセンサー会社さんと協力しながら、Gravioを育てていきたいと考えています。

私たちが目指してるのは、誰もがカジュアルにGravioを活用してくれる世界です。スマホアプリと同じような感覚で使ってほしい。今は手作業で行っていることをどんどん自動化して、社会全体の生産性を上げていこうと考えています。

新モデル「Gravio Hub 2」には有線LANのポートもある。「Wi-Fiのない場所でも安定して使えるように、接続性を高めるため有線LANのポートをつけました」(田村氏)

──最後に、GravioのユーザーやGravioの導入を検討している方へのメッセージをお願いします。

北原氏:「業務の遠隔化・自動化」というと、みんな大規模なものを考えてしまうんですが、そうなるとコストも高くなります。Gravioだったら、同じことが手軽にできるケースが結構あります。

毎日行っている動作の中で、「これって自動化できないかな?」という小さな気づきがあったときに、カジュアルに試せるのがGravioです。その小さな気づきを、Gravioであれば自動化できるかもしれないので、気軽にGravioで一度データを取ってみることをおすすめしたいです。

田村氏:Gravioにはセンサーだけでなく、ワイヤレススイッチというボタンがあります。押すと通知が行くだけなんですが、シチュエーションによってはとても効果的に活用できることがあります。たとえば、会社で何かの備品が切れそうなときに、口頭で伝えたりメモを残すのではなく、設置してあるボタンを押すだけで、購買のフローが進むようにシステムを組めば、みんなの時間と手間が省けてストレスも減ります。Gravioは月額500円から使えるので、ぜひ一度触ってみてほしいです。

ノーコードでAIやIoTをより身近に。

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